第十一話 航海灯

最近、航海灯の質問がありましたので、ちょっと書いておこうと思います。夜間航行には航海灯が必要ですが、いろいろな規定があります。

夜間の帆走時は、左舷の赤と右舷の緑、それに後部にスターンライトの白の三つが必要です。
多くの場合、バウに両色灯か左右ひとつづつの舷灯とスターンにスターンライトとなります。
或いは、マストトップに三色灯と停泊灯の二段の灯火を備えた場合、夜間の帆走時は三色灯のみでもOKです。三色灯は赤と緑と白の三つがありますから、これひとつでOKという事です。

   写真は三色灯です。上段が三色で、赤、緑
   写真では、見えませんが、後部側が白で
   す。

   二段の下側は停泊灯です。二段ですから
   点灯するスイッチも2個必要です。

   ちなみに、赤と緑は見える角度が、それぞ
   れ112.5°、スターンライトは135°
   ですから、

   112.5+112.5+135=360

   航行中のヨットを見る時、どれかは見えて
   いる事になります。

   前部灯は225°です。停泊灯は当然なが
   ら360°前部灯の225°とスターンライト
   の135°を足しますと、360°になります。

   後述しますが、全長12m以下の場合、
   停泊灯1個で、前部灯とスターンライトの
   ふたつが付いているという見方もできま
   す。
   

さて、エンジンで走る場合ですが、この場合、赤、緑、白(後部)にプラス前部灯というライトが必要になります。前部灯、またはマスト灯という場合もあり、英語ではスティーミングライト。これが、エンジンで走っていますよという合図です。通常、マスト中間部の前側に設置されています。

但し、全長12m未満の場合、赤と緑、それに停泊灯をつければ、停泊灯が、前部灯と後部灯の両方を兼ねる事ができます。但し、この停泊灯と赤/緑の距離を1m以上とされます。つまり、マストトップに三色灯がある場合、赤、緑、それに停泊灯では、1m以上の距離が無いので、ダメですね。
その場合は、停泊灯と、デッキ上の赤、緑をつけて、距離を1m以上離す必要があります。

ちょっとわかりにくいでしょうか? つまり、帆走時は赤(左舷)、緑(右舷)、白(後部)、エンジンで走る時は、これに加えて白(前部)が必要となり、全長12m未満の場合は、停泊灯1個で、前部灯と後部灯を兼ねる事ができるという事です。但し、この場合は、停泊灯と赤/緑の距離を1m以上
離しなさいという規定です。

そして、停泊時は、停泊灯のみという事で、これにもし、赤、緑をつけると、エンジンで走っていますよという意味になります。ですから、停泊時は停泊灯1個のみ。

さて、相手の灯火を見る時、赤が見えるとすると、相手は、右から左に前方を移動中で、通り過ぎますと、今度は、後部灯が見えてきて、離れていく事が解ります。緑なら、逆で、左から右に移動中、つまり、相手の右舷側が見えるという事になります。そして、緑が見える時はこっち優先、赤が見える時は相手に優先権があります。とは言っても、本船航路では本船優先ですし、漁船なんかは見ていない事もありますので、常にこちら側で避けた方が良い。

赤と緑の両方が見えたら、相手はこっちに向かって走ってきています。それに前部灯(白)が見えたら、エンジンで走っています。また、白ひとつだけが見えたら、相手の後ろが見えている事になります。或いは、停泊灯で停止しているかです。

パターンは決まっています。赤のみが見える。緑のみ、白のみ、赤/白、緑/白、赤/緑/白、
赤/緑、という事になりますので、各パターンでの、自船と相手との位置関係を頭に入れておく必要があります。これで、相手が、どっちに向かっているか、帆走かエンジンで走っているのかが判別できます。

夜間航行の場合、陸上の明かりがたくさん見えて、重なったり、慣れないと判別しがたい事もありますが、遠くであれば、それほど気にしないでも良いでしょうし、その灯火が移動しているかどうかでも判断ができます。まずは、慣れ親しんだ海域で、夜間航行になれる事だと思います。

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