第二十二話 お一人様

テレビのニュースを見ていましたら、最近では、一人で行ける店というのが流行っているらしい。
ひとりで行く一人専用カラオケ、ボーリングに行く人も居るらしい。それに焼肉店とか、ひとりでしゃぶしゃぶが食べれる店とか、いろいろあって、気を遣わないで良いとか、そういう意見もあって、結構ひとりあそびをする人は少なくないそうです。

ちょっと、カラオケにひとりで行くのは考えられませんが、世の中、そういう人が増えているとか。
それじゃ、セーリングもシングルでどうでしょう。誰にも気を使わなくて良いし、出たい時に出て、帰りたい時に帰る。

走りたい走り方が出来て、セーリングに集中できるし、音楽聴きながらでも良いし、歌っても良いし、したい時にしたい事が出来て、ストレスフリーです。

でも、その為には、一人で操船できる事が条件になります。実は、ひとりとふたりでは数値以上の違いがあります。ちょっと、舵を離れて何かをするにも、ふたりなら簡単ですが、ひとりならどうするか?しかも、気軽に出来るようで無ければ、しょっちゅうはやれません。

ショートハンドをうたうヨットは数あれど、シングルハンドをうたうヨットは少ない。元々、シングルハンド用のヨットなんかデザインされていなかった。それがデイセーラーというコンセプトが出てきて、シングルハンドを容易にするという考え方になりました。

舵をもったまま、基本的操作が出来る。しかも容易に。これが違うところ。それに加えて、高い安定性があった方が、シングルには良い。リーフもシングルでやります。シングルでやれると面白いし、気持ちが良い。誰かをコクピットに座らせたとしても、シングル操作でコントロールできると、実にピクニックだって楽しめる。スポーツカーの感じです。

だいたい、ふたり居なきゃ動かせないなんてのは、実に不効率でありますね。それに、デートセーリングだってできないですよ。お孫さんを載せてあげようなんて事もあるかもしれません。そんな時はシングルの方が良い。

シングルで出ますと、話相手が居ませんから、おしゃべりしないし、自然とセーリングに意識が向かいます。集中力も上がる。そうしたら、よりセールカーブを気にして、いろいろ操作して、より良い走りに変わったりして、セーリング自体が面白くなる。シングルハンドにはそういうメリットがあります。

デメリットは、誰にも頼れないという事です。だから、自分のヨットは熟知していかなければなりません。とは言いましても、最初から熟知している人は居ないわけで、マリーナからの出し入れと、セーリングは、最初はジブとメインのシート操作だけでも良いかと思います。慣れてきたら、バックステーを操作して、カニンガムもあれば操作して、バングやトラベラーや、いろいろ操作して遊ぶ事ができます。シングルでは、そういう装備があった方が、自然にセーリングに注意がむいていきますので、遊ぶ範囲が広くなり、面白いかと思います。使いたくなかったら、使わなくても良いんですから。

そういう事で、デイセーラーはシングルハンドが最もやり易いヨットとしてデザインされています。シングルハンドという言葉を出しているのは、デイセーラーが初めてではないか?アレリオン、ハーバーヨットなんかそうですね。実は、ノルディックフォークは、デイセーラーとしてデザインされたわけではありません。これがデビューした頃には、デイセーラーというコンセプトは無かった。あるとしても、ただ小さいヨットという意味合いでしか無かったのですから。

当時はドラゴンが流行っていました。それに代わるレースを遊ぶヨットとしてノルディックフォークが誕生した次第です。でも、当時のレースであって、今時、これをレーサーと呼ぶ人は居ません。欧米ではワンデザインのレースを楽しんでいるようですが。また、昔は、これで大西洋横断とか、世界一周までした人が居たとか。

今日ではノルディックフォークをデイセーラーの位置において良いと思っています。他の最新デザインのデイセーラーよりは少々手間はかかるものの、基本的には、デイセーリングの扱いでセーリングを楽しめるヨットだと思います。

次へ        目次へ