第二十四話 微軽風

風が強くなれば、どんなヨットだって、面白くなる程に走ってくれます。アビームぐらいまでなら、何とか開いてくれますが、ダウンウィンドになりますと、見かけの風速が弱まり、重いジェノアを思うように開いてくれない。そんな微軽風を感じ、途端に退屈なセーリングになりかねない。場合によってはエンジンかけてとか考えたりします。

それを何とかしようとするのがジェネカーです。ジェネカーと言っても、いろんな種類があります。レーサーなんかが使う非対称スピン、クルージング用のクルージングスピン、形は実はいろい変える事もできます。

先日のノルディックフォークのセーリングで感じた事があります。このヨットにはファーリングジェネカーが設置されています。広げてみますと、ラフは殆ど直線に近い。形状としては、ジェノアに近いセールです。

  写真ではラフはカーブしていますが、これは
  スピンハリヤードを少し緩めた状態で、ハリ
  ヤードを引けば、直線に近い。

  そしてラフは巻き取る芯になりますので、約
  4〜5cm幅ぐらいで補強がなされています。

  このジェノアのような形状で、スピン生地の
  セール、これはシングルハンドにとっては、
  非常に都合が良いと感じました。

  まず、ファーリング式で、出航前に上げる事
  が出来る。ドラフトもジェネカーにしては浅め
  で巻き取る時途中に袋が出来にくい。きれい
  に巻けます。セールを開いたり、閉じたりが
  スムースに出来るのは実に有難いです。

  それにトリミングもし易い。これが何といって
  も、シングルには有難いと思います。もっと
  両肩が張った通常のジェネカーだと、性能と
  してはベターなんですが、より扱いが難しく
  なります。従って、こういうジェノア的ジェネ
  カーは、特にシングルの方には扱い易いかと
  思います。


  ドラムはタック側に、ドイツのバーテル社の
  ドラムを採用しています。これは写真の様
  にシンプルで、小型艇には良いかと思いま
  す。ドラム直径86mmと小さく、回転も実に
  滑らかです。回転はエンドレスロープをコク
  ピットにリードして操作します。

  このドラムでは、セールエリア50uまでで、
  この上のサイズでは、ドラム直径115mm
  セールエリア70uまでとあります。このセー
  ルエリアでしたら、結構なサイズまで行ける
  と思います。
    


  セールのトップ側には、写真のハリヤード
  スイブルを設置して、これをスピンハリヤード
  で引き上げます。

  セールのラフにはワイヤーとか、よじれにくい
  ロープとか言われますが、ノルディックフォー
  クのジェネカーのラフには、そんな物は入っ
  ていません。ただ、生地を厚くして補強され
  ているだけです。それでも、ちゃんとスムース
  にファーリングできました。

  これ、なかなか良いと思います。



  左の写真は、また別のヨットのジェネカー
  ファーラーですが、メーカーの推奨では、セ
  ールのラフ上下に写真のような三角形の三
  穴プレートを使い、細いロープやワイヤー、
  中央にはベルトのような丈夫な生地で、セー
  ルトップと下側のプレートをつないで補強し
  ます。これが巻き取りの芯になります。








  マストの左側に見える白いセールは、
  ジェネカーのラフです。直線ですね。ハリヤ
  ードを緩めればカーブも作れますが、ファー
  リングする時はハリヤードを締めて、直線に
  します。

  これで、きれいに巻く事ができます。
  ドラムロープはエンドレスですから、お好きな
  だけ巻ける。






  シートはもちろん、スピン用のブロックを通し
  てウィンチにリードします。こういうセールで
  すから、上りも結構上れる。但し、上りでは
  セールのストレスが強くなりますので、こういう
  スピン生地では消耗が激しくなるかもしれま
  せん。ただ、上れるというだけで、基本的に
  はアビーム前後から、下側で使う。
  軽い風でも、セールが軽いですから、きれい
  に開いてくれます。まだ試してはいないので
  すが、前オーナーのお話では50度から
  135度ぐらいまで走れるという事でした。
  先日は弱い風で、アビーム中心に走りまし
  たが、なかなか良く走ってくれ、面白さを感じ
  ました。取り扱いも楽だし、ファーリングも実
  にスムースでした。

さて、結論的に申しますと、このジェノア的ファーリングジェネカーは、非常に使いやすいという事です。特にシングルハンドの方が、ジェネカーを使うというのは、結構大変になります。クルーが居るなら非対称スピンをソックス形式で上げるのでも良いとは思いますが、シングルハンドになりますと、事情は異なります。

ジェネカーのファーリング装備は、他にもメーカーはあります。ただ、今回はセール形状をジェノア的にした形状である事と、ファーリング艤装がシンプルであるという事です。このセールはジェネカーですが、見方を変えれば、超ライトジェノアと言っても良いかもしれません。そうしますと想像し易いかもしれません。

こういう形状のセールでは、あまり落として走る事は困難になりますが、そういう性能は持ち合わせない。でも、シングルで、かなり落として走りますと、メインセールは大きく張り出し、もし、波が悪いような状況なら、ワイルドジャイブの危険性もあります。そういう意味では、あまり落とさない方が、
かえって安心ではないでしょうか?何しろ、舵もメインもジェネカーもひとりでコントロールするわけですから。それに、ラフがハリヤードを締めておけばある程度安定しますし、トリミングも楽になります。つまりジェノア感覚でセーリングができる。それもダウンウィンドを。

セールの性能を求めれば、非対称スピンの方が良い事は分かっています。しかし、シングルハンドの方が、より楽に、しかも、もっと面白くセーリングを楽しむには、もってこいではないかと思います。但し、ジャイブは一般ジェネカーと同じですから、外回し。それが難しいなら、簡単に巻き取っ
て、ジャイブしてまた展開ができます。その方が確実ですね。

これからのイージーハンドリング、特にシングルの方へはお薦めの装備ではないかと思います。これを使えば、きっとセーリングの面白さに幅が広がるかと思うのですが? いかがでしょうか?
デイセーリング推奨派としては、お薦めのセールです。ダウンウィンド用のセールとして、つい規定のセール形状を求めやすいのですが、そうなると、取り扱いが難しくなったりしましたが、こうやって割り切れれば、随分楽に、エキサイトなセーリングが楽しめるのではないでしょうか?

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