第三十五話 シングルでジェネカーを
シングルハンドでも面白いセーリングを堪能する為に、何とかしてジェネカーを使えるようにしたい。その最も良い方法は、ファーリングシステムだろうと思います。現在、いろんなメーカーがありますが、その方式としてはふたつあります。 図1 セールのラフに左の図のように、軸を縫い 込んで、その軸を中心に巻く。従って、セール のラフはストレート、或いは、少しカーブを もたせる事も可能ですが、巻く時はテンション をかけてストレートにします。 1)スピンハリヤード 2)ハリヤードスイブル 3)三角プレート 4)スナップシャックル 5)ドラム(エンドレスロープ用) 特徴 ラフはハリヤードでテンションがかけられ、 安定します。但し、セールが左右に移動 しないので、上り角度は多少稼げますが、 逆に下りの角度は犠牲になります。 ラフにはハリヤードテンションがかかります ので、補強され、これが巻き取り軸にもなり ます。 図2 セールのピークとタックのみを接続。その 中間はフリーな為、セール形状を制限しな い。巻き取り軸には、ねじれにくいロープ を設置して、それを軸に巻き取ります。 特徴 セール形状の制限が無いので、本来のジェ ネカーセールを設置できる。取り扱いは通常 のジェネカーと同じ。 ジェネカーセーリングの性能重視では、図2の方が良いです。但し、シングルハンドという事を考えて、総合的に考えますと、図1の方式の方が、扱いやすいのではないかと思います。その理由は、ハリヤードにテンションがかけられる事によって、セールが安定するからです。 ファーリングに望む事は、確実にきれいに、セールを巻き取る事です。図1の方式は、ドラムに設置されたエンドレスロープを引く事で、ドラムが回ります。その時重要な事は、セールピーク側にその回転が早く伝わるかどうかです。これが遅いと、タック側がどんどん巻かれていきますので、セールのリーチ側が残る事になり、セールをタイトに巻けない。それで、巻き取った後もパタパタはためいてしまいます。ですから、セールのトップ側に、早く回転が伝わる事。 図2では、ドラムが回転しても、セールのタックは回転しません。ドラム回転は軸に回転力を伝えますが、セールタックにはそれが繋がっていません。という事は、ドラムの回転はセールのピーク側に伝わり、上側から先に巻くという事になります。これは図1のように、回転がトップに早く伝わるかどうかという事を心配しなくていい事になります。セールは上側から巻かれます。 という事は、ファーリングにおいては、図2の方が良いという事になります。しかしながら、シングルハンドという事を考えますと、図1のセールは安定しており、使い易い。アビームからもっと上れて、下りでも、そこそこは使える。この安定しているという点は、シングルにとっては大きなメリットになるのではないかと思います。図2の方式でも、シートを引いておけば上れます。多分、80度とか70度とか上れると思います。そして下りは、本来のジェネカー程度下る事ができます。しかし、不安定になりやすいので、シングルの場合、風の具合、波の具合によって、より神経使わなければならないかと思います。図1では、もっと上れて、多分50度とか上れると思いますが、下りでは、セール形状にもよりますが、135度ぐらいとか。でも、シングルで、ジブとメインを使った上りと、落として、アビーム中心に上ったり、下ったりが簡単にできるなら、こっちの方が面白いのではないかと思う次第です。これはあくまで、レースでは無く、個人的にセーリングを楽しむという前提です。 セーリングを楽しむ時、微軽風で、エンジンをかけて帰ろうかという場面は少なくありません。そういう時に、ジェネカーを簡単に出して、セーリングを楽しめるというのは大きなメリットです。セーリングの楽しみが大きくなります。それには、シングルではファーリングが最も簡単で良いかなと思います。その方法は上記ふたつ。より確実に巻き、展開できるようにする為、まだまだ試行錯誤は必要かもしれませんが、バウポールの設置問題もありますが、将来は、セーリングを楽しむという点でおおいに考慮されるべきアイテムかと思います。それには、シングルでの帆走を可能にすれば、誰もが楽しめるという事になります。2012年は、これが重要課題だと思いますね。将来のセーリングを左右する? 大げさでしょうか? 既存のヨットにバウポールを設置する事は簡単では無いかもしれません。しかし、今後は、新艇等はこういうジェネカーファーリングの設置を考えて、造船所でバウポールないし、それに代わるジェネカーファーリングの設置を考慮された艤装が出てきてほしいと思いますね。ジェネカーはセーリングを変える。そう思います。 |