第七十九話 艤装の役目

艤装にはそれぞれの役目があります。しかし、その働きがなされる時、他の部分にも影響を与える事が多く、知ればより複雑さが見えてきます。そこが難しい処であり、その複雑さが解る事が面白さでもあろうかと思います。

例えば、ハリヤードというロープは、セールを上げる為に使われるロープです。単純に考えれば、それだけの役目ではありますが、でも、同時にセールのラフにテンションを加えるという役目もします。ラフにテンションを加えますと、セールのドラフトが前側に移動し、緩めると後退します。

さらに言いますと、セールが風を受けて、セールに強いプレッシャーがかかりますから、ロープが伸びる事もあります。すると、ドラフトが後退する。ハイテクセールを使うと、セールは伸びにくくなります。しかし、ハリヤードが伸びる。だから、ハリヤードもセールに合わせた延びにくいロープにする必要があります。

風が弱い時、強い時、ハリヤードのテンションをそれに合わせる事になります。しかしながら、それをしなければ走れないわけではありませんから、初心者でもセーリングはできるし、ベテランも楽しむ事ができる。ただ、レベルの高いベテランは、初心者以上に多くの事に気がついているという事になります。という事は、セーリングの遊ぶ内容が違うという事にもなります。

艤装はたくさんあって、互いに影響しあいます。それを徐々に理解して、より多くの事に気がつくようになりますと、それだけ複雑さを遊ぶ事ができるようになります。これは面倒な事なのか?理解している人にとって、これは面倒では無く面白さではないでしょうか?もちろん、気分がそこまで乗らない時は、しないかもしれません。しかし、気分が充実していれば、それは面白さとして捉える事ができます。

つまり、ベテランになるという事は、面白さの要素をたくさん持っているという事になります。今、この瞬間にするかしないかは、その人次第ですが、知らないとする事はできません。ですから、面白さの要素はたくさん持っていた方が良いという事になると思います。

しかし、これは理屈に過ぎません。その複雑さを理論で知って、実際のセーリングで観察する事によって、その違いを見極めるという観察力も要求されます。違いが解るという事です。違いが解るからこそ面白いという事になると思います。つまり、知識も観察力も必要になります。それには集中力も必要になります。

セーリングはヨットの性能によって変わり、乗り手のレベルによっても変わる。でも、初心者でも遊ぶ事ができる。艤装のひとつひとつを理解していくだけでも、相当解るようになるのではなるのではないかと思います。理屈が解ると、そういう目で観察しますから、変化が感知しやすくなる。そうやって続けると、いつの間にか、いろんな事が解る。いろんな事が解ると、余裕も出てくる。余裕が出てくると、遊び方も臨機応変になれる。臨機応変になれると、自由自在になれる。自由自在になったら、面白さを操作できる。面白さを遊ぶ事ができる。これは全部を達成してなるものでは無く、アナログ式に、自由度が高まるという事だろうと思います。

そうしていけば、初心者に面白く、ベテランになっても面白い。どんどん違う面白さが解ってくるようになる。それがベテランのセーリングだろうと思います。初心者の方が、取り敢えずセーリングできるようになったら、艤装をひとつひとつ吟味して、理解を深めていくという事をお薦めしたいと思います。

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