第八話 思い違い?

ヨットに対して、思い違いがあるのではないか? そんな気がします。例えば、レーサークルーザーと呼ばれるヨットがあります。名前にレーサーという言葉が思い違いをさせる原因ではないかと思います。この名前があるからといって、レースに使うヨットという決まりはありません。

内装を見ますと、クルージング艇に全くひけを取らないし、良いのになると、一般クルージング艇より、内装は造りこまれています。内装だけを見たら、りっぱなクルージング艇なんですね。それで違うのは、重量を軽くしている事と、セーリング重視の艤装の仕方をしています。ですから、これは速いクルージング艇、それで、ハイパフォーマンスクルーザーという言い方をする場合もあります。
昔は、頑丈なヨットイコール重いヨットでしたが、今日の技術では、軽く強く造れるようになりました。

  この写真はアルコナ430です。これだけ
  見れば、クルージング艇と言ってもおかし
  くは無いと思います。しかし、このヨットは
  排水量/セール面積(メイン+105%ジブ)
  で言えば、SADR値26あります。
  IJPEで計算してもSADR値は22あります。

  この性能なら、セルフタッキングジブにして
  も十分速い。メインとセルフタッキングジブ
  でも、SADR値は24になりますから、十分
  ハイパフォーマンスであります。

ハイパフォーマンスだからレース用というのは思い違いです。これをクルージングに使って良いし、しかも、外洋性も高く、ヨーロッパCE規格のAですが、最低基準を遥かに越えて、風速25m〜29m、波高7mの中で、5日間以上自走できるというものです。

多くのクルージング艇が、クルージングに行く時、エンジンで走る事は非常に多い。ならば、こういうハイパフォーマンスクルーザーを使えば、セーリングは速いし、クルージング以外の時でも、セーリングを堪能できます。さすがに、デイセーラーのようにシングルハンドとは行かないでしょうが、ダブルハンドならOKです。バラスト比は39%です。最近のクルージング艇が30%を切っていますから、安定性も高い。

ハイパフォーマンスクルーザー、又の名をレーサー/クルーザー、このヨットはクルージング艇と言っても良い、足の速いクルージング艇と言っても良いのです。

クルーザー/レーサーは、内装がもっとシンプルですが、それでも、ちゃんとキャビンがあります。帆走性能はもっと高い。でも、それももっと足の速いクルージング艇と言っても良いと思います。
これらは、何もレース用に限定して建造されたわけではありません。ただ、ロングクルージングとは言いませんが、近場なら十分のキャビンではないかとも思います。

こういうハイパフォーマンスヨットを、セルフタッキングにしたり、電動ウィンチを採用したり、扱いやすい艤装を考えて、クルージングのみでは無く、セーリングにも使うというのは、遊びの幅もできて面白さも増えるのではないかと思うのですが?

これらのヨットは、日本では即レースのイメージで捉えられています。ただ、レースに使われる多くのヨットがこのジャンルではありますが、別にレース専用のレーサーでは無いんですね。名前がそういう思い違いを起こさせる。速いクルージング艇、ハイパフォーマンスクルージング艇と言っても良いと思います。

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