第六十四話 クルー不足

最近では50フィートあたりのでかいヨットも売れていると聞きます。もちろん、ジョイスティクなんかで操作できるタイプになっているようです。博多にも、先日、44フィートの、そういうヨットが進水致しました。それを見ますに、ますますボリュームが大きくなっています。まあ、兎に角でかい。そうなると、スラスターなんかが必要になるわけです。

ところが一方で、小さ目のヨットも人気があります。それはどういうヨットかと言いますと、もっとセーリング自体を満喫したいというオーナーのご要望があります。ある方は31フィートのデイセーラー、ちょっとレーサー色が強いタイプですが、また、20フィートのデイセーラー、またある方は21フィートのレーサーという具合です。

これらの現実を見ますと、何だか、ふたつは両極にあるような気がします。でかいヨットは、最新設備で、動かすのを簡単にして、クルージングを少人数で楽しめるようにしようという動きで、もうひとつの小さい方は、便利より、セーリング自体をもっと求めるという感じです。もちろん、シングルハンドです。

同じヨットではありますが、求めるものが全く違います。共通するのは、少人数という事です。多分、これは日本だけの事では無く、世界的な傾向なのかもしれません。クルー不足です。或は、たくさんクルーを集めてキープしておく事が面倒くさいと思われているのかもしれません。

そのクルー不足というキーワードによって、ジョイスティックなる便利装備が開発されたと思います。クルーが居るなら、ジョイスティク操作なんて無くても良い。そのジョイスティックを採用する事で、さらに船体をでかくしても操作ができるという事へも発展して、もっとアピールができる。幅を広くして、ツウィンラットというのもアピールのひとつになります。

そのクルー不足というキーワードは、セーリングにおいては、シングルハンドを助長していきます。最近の多くのハイパフォーマンスヨットが、セルフタッキングやノンオーバーラップジブを採用してくるようになりました。また、デッキアレンジを見ても、シングルやダブル程度を意識しているのが解ります。

でかいヨットでも小さいヨットでも、これからの傾向はシングルハンド。シングルならば、どうにでもできる。クルーが居ようが居まいが、未経験のゲストだろうが、誰でも招待できます。また、もちろん、ひとりでもOK. シングルは最大公約なんですね。この傾向は、これからずっと続くのではないでしょうか?

そのうえで、セーリング主体なのか、クルージング主体なのか? どちらにしても、自由自在に操作ができる事がこれからのヨットライフには重要であります。機械を使って、楽に操作する。或は、自分の手の感触でセーリングを楽しむ。どちらも、目指すはシングルと自由自在であります。

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