第八十一話 ヨットへの思い

それぞれの方がそれぞれの思いを持ってヨットをされると思います。ヨットというのは、セーリングしているだけも気持ちが良いものです。もちろん、良い時ばかりではありませんが、でも、エンジンをカットして、風と波音だけになった時、それで走る事の、何だか、言葉では言い表せない趣と言いましょうか、気持ちの変化が見られます。

最近のエコだとか、そういうのでは無く、日常生活から離れ、自然の中に浸る感じは、癒しそのものではないでしょうか? 確かに、強風と格闘する事もありますし、風が無くて漂うような事もあります。しかし、そういう事もあるのが自然ですから、それらも含めて、嫌がらずに、そのままを受け入れる事ができたら、どんなにか心和むでしょうか?

我々は、常に、求める物を得ようと努力しますが、それはそれで良いのですが、その時の結果を、素直に、そのまま受け入れるという姿勢は、あらゆるストレスを排し、心落ち着く感じがします。こういう時もあるさ、と最後は思えるならば、ヨットというものともっと仲良くできるのではないでしょうか?

もっとスピードをと、知識を求め、腕を磨くのも大切な事ですが、そういう努力をしながら、最後は、全面的に受け入れるという事が、ヨットを心から楽しむ事になるのではなかろうかと思います。

楽しさを演出する為に、友人を招いたり、宴会したり、どこかに行ったり、いろんな事を考えます。それらも大事なイベントです。しかし、最後は、黙ってセーリングに浸ってみるというのも、特別な何かがあるわけでは無いのですが、何か良い感じがします。身も心も癒されると言いますか、良い感じなのです。

こういう心境に至る時、こちらから特別な出来事を望む事も無く、そういう心境が、そういう良い気分というのをもたらしてくれるのではないでしょうか? 何も無い、ただの散歩をしてみたり、気分良くサイクリングしてみたり、それらと同じかもしれません。

我々は常に欲求を持ち、それらを手に入れようとし、努力しますが、何も求めない時、実に穏やかな気持ちにもなれる。そういうセーリングもあるのではないでしょうか?何ノット出ているとか気にしないし、もうちょっとシート引いた方が効果的だとか、そういう知識も技術も考えない時、そういう良さもあるかと思います。求めないからこそ、手に入るものもあるのかもしれません。

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