第10話 脳みそ

脳みそとは理性、思考のことです。私はいつも何かを考えています。頭は思考で一杯です。
世の中はこうあるべきだ、政治が悪い、仕事はこうすべきだ、父親だから、遊んでて良いのか、
大人だから、いつも、ああででも無い、こうでも無い。雑音ばかりなのです。今夜の飯は何かな
たまには一杯飲むか、そして、今も考えていますが、思考は必ずしも良い面ばかりでは無いと
思うのです。気がつかないうちに、常識という洗脳された脳が私の中にあり、それが自分自身だ
と思いこんでいます。

思考は大切な物ですが、心の豊かさをかなり奪いとってしまっています。使い方に問題がある
ようです。思考は過去の経験から未来を予想し、何でも決め付ける。それを元に今を造る。計画
するだけなら、それで良いのですが、雑音ばかりの脳は心が感じる事を規制してしまいます。
こんなことすると恥ずかしい、情けない、世間体が悪い、そういう事で多くの事を逃してきました。

必要無い時、頭は使わない方が良い。ヨットでセーリングしていると、そういう時が体験できます。
セーリング自体に集中し、脳みそが他の事を考えなくなる。すると心が敏感になるような気がする
のです。そういう時は自然と一体化します。すると、特別な事があるわけでも無いのに、心は豊か
なのです。だから、また行こうと思います。

思考は過去と未来を重視しています。でも、充実感や喜びを感じるのは今ここにある心、心は今に
しか居ない。という事は最も充実すべきは今ではないでしょうか。過去を見て、喜ぶこともできれば
悲しむこともできる。未来を想像して、喜ぶこもできれば、悲しむこともできる。しかし、過去はもは
や存在しないし、未来はどうなるかは解らない。過去と未来は思考の中にあり、心は今にある。
それで、今している事に集中すると、心はとても充実感を得る。

そう考えると、思考は心の邪魔ばかりしていることが解ります。必要以上に思考を巡らさない事が
必要なのではないでしょうか。セーリングは今に集中する事ができます。もちろん、良い時ばかり
では無いでしょう。しかし、セーリングこそが、最も充実感を与えてくれます。今を味わい感じること
が重要なのではないでしょうか。

セーリングは自然相手ですから、こちらが合わせるしかありません。人が相手なら、自分に合わせ
ろと要求することもできますが、自然相手ではそうは行かない。だから、相手に文句を言う気にも
なれない。と言う事は最初からストレスの溜まり様が無い。言う事を聞かない相手には文句も言い
たくなるが、自然に対しては、自分が相手の言うことを聞かなければなりません。それしか方法
が無い。それで、謙虚に自分から合わせる。素晴らしい走りをした時の感覚は、遠くへ行かなくて
もそこにある。それが解ります。思考では解りません。頭を使わないで、セーリングして下さい。
心でセーリングして下さい。そうすると、誰もが幸福になれる。

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