第49話 自分に相応しいもの
何を選ぶか、何が最適であるか、それはどんな使い方をすると最も快く感じられるか にかかってくるわけですが、それが解らないので、周りを見て、それに右倣えする。 そして、それが正しい選択であったら満足だし、そうでなかった場合、これが問題で す。そうでなかった場合に、それでは、どんな使い方が自分に相応しいのかを知る 為に最初の選択があるわけですから、その最初の選択も、その為と知れば間違った 選択ではなかったという事になります。という事は、何を選択するにしても、間違いは 無いわけで、それを生かすかどうかの問題となる。 ところが、最初の選択で間違ったと意識すれば良い方で、間違ったと意識せずに、 そのまま放ったらかしになっている。それでは、最初の選択は間違いとして完結し、 それで終わる。これでは自分で選択を無駄にしていることになります。どんな選択も 次のステップへのプロセスと思えば、間違った選択は無いわけですから、自分が選 択したものを自分がどう感じたかをちゃんと心にとめておく事が次の選択の条件とす る事ができる。 マリーナの動かないヨットは寂しいものを感じますが、それもちゃんと心に留めておけ ば、次の選択の単なるプロセスとなります。今はみなさんがそういう事を感じておら れる時期ではないかと思うのです。という事は次のステップでは、もっと自分に相応 しい、より良い選択をされるでしょう。すると、やがてはヨットがどんどん動き、多いに みなさんが楽しまれる光景を見る事ができるようになると確信しています。今見る光 景は、その為に必要なステップだと思っています。 自分がどんな性格をしていて、どんな乗り方をすると最も楽しいかが、解ってくる。そう するともはや他人と同じである必要性なだ何も無いわけで、自分なりの楽しみ方がわ かってくる。その為には、まず何かを選択するという最初のステップが必要です。 実を言うと、ヨットにも様々な楽しみ方があるもので、セーリングする事、どこかに移動 する事、桟橋において生活を楽しむ事、メインテナンスを楽しむ、磨いて楽しむ、自分 なりの工夫を施して楽しむ、眺めるという楽しみや他人に見せびらかすという楽しみ、 持っているという所有感の楽しみというのもあるでしょう。どれが良くて、どれが悪いと いう事は無いと思います。それぞれが楽しいという感覚を得られればそれが最も良い。 ただ、楽しみはひとつよりふたつの方が倍楽しめるし、3つあれば3倍楽しめる。自分を 偽って、こう楽しまなければならないと思う事は間違っていますが、自然に楽しめるもの をひとつでも多く持てるようになれば良いですね。 その為に、何でも試してみるという事をお奨めします。頭の中で、これは嫌だとか、考え る前に、一度トライしてみる。メインテナンスは自分には向かないと思っても、一度は自 分でやってみる。そうすると自分のヨットが良くなっていったり、良く解ったりして、そうい う発見を楽しいと思うかもしれません。磨いたり、艤装を考えたり、船に泊まったり、そ してもちろん、セーリングしたりです。セーリングも一人でやってみたりすると、仲間と にぎやかに談笑しながらセーリングしていた時とは異なる感覚を得たり、あるいは、ロー カルのレースに出てみたり、そうする事で新たな発見もあるかもしれない。そういう事が 自分に相応しいヨットを選択する唯一の方法ではないかと思うのです。それで、もし、 どれも楽しめなかったら、ヨットはやめた方が良い。世の中、ヨット以外にも楽しい事は たくさんあります。でも、どれかが、楽しいと感じたら、それを中心に置く。 どれを試すにも、小型ヨットはやり易いと思います。いきなり大型艇を磨くとなると、それ はしんどい。いろんなアレンジにしても、セーリングにしても、小型ヨットなら自分でできる サイズです。これを少なくとも数年間乗って、いじって、磨いて、メンテして、乗りまわして ヨットというものを知るには格好の材料になると思います。大きい方が楽だからと楽だけ を求めるなら、ヨットなどしない方が良い。その他のスポーツなどをするにしても、本当に 楽しいと心から思えるのは、楽だけならそうはならないと思います。楽だけならエアコン の効いた部屋でじっとテレビでも見てる方が楽なのです。でも、楽だけでは快感は得られ 無い。何かを追及してはじめて、充実感を得る事ができる。誰でも、実際は楽をしたいわけ では無いと思います。本当は充実した感覚を得たいと思っている。それを得るには、一歩 突っ込んでやってみないとわかりません。 ですから、最初は小型艇を徹底的に遊んでみることをお奨めします。そして、中でもセーリ ングこそがヨットでしか味わえない感覚ですから、セーリングを多いに楽しんでいただきたい と思います。それを気楽に味わうには、やはり小型艇の方がやり易い。とにかく、少しでも ヨットと接する時間を持つ事です。そうしたら、自分に相応しいヨットが見えてくる。頭で考え ただけでは解りません。何故なら、頭は自分では無いからです。何を感じるかではないで しょうか。頭は理屈、頭は常識、頭は世間体、でも、心は自分です。 |