第79話 外国からの来訪者

アメリカから老夫婦がヨットで日本にやって来た。彼らの目に映った光景は、日本人は何故ヨットに
乗らないのか、そして、週末、何故、泊まらないのか。とても、不思議がっていました。何故かと
言われても、困りますが、要は、ファミリークルージングと言いながら、ファミリーでヨットを楽しむ
気風が無いからでしょうね。家族はヨットには来ない。そしたら、おとうさんは自分だけでヨットに
泊まりに来るわけにはいかなくなる。

彼らの考え方は、ヨットはセーリングする為にあり、キャビンは泊まる為にある。そう考えているよう
な気がします。しかも家族単位です。子供が小さい頃は小さなヨットで楽しむ。子供がおおきくなっ
たら、ヨットも大きくなる。子供が成長して、家を出ると、また、小さくなる。そして、引退したら、大き
なヨットにして、夫婦でクルージングして回る。いよいよ動けなくなったら、ヨットを売って、国に帰る。
どんな状況にしろ、その状況に合ったやり方で、その時を楽しむ事を忘れない。将来、夫婦でクルー
ジングして回るからと言って、今大きくすると、今を楽しめなくなる。非常に、合理的な考え方で、
今できる事を、今充分に楽しむという事のようです。

ヨットは高い買い物で、将来買い換えなどできないという方は多いのです。でも実際は、かなりの方々
が2度、3度と買い換えられています。ゼロから買うより買い換えの方がやりやすくなる。最高、8艇
を買い換えてきた人がいます。小さい物から、だんだん大きくなり、そして、また小さくなったり。それで
過去に買ってきたヨットが無駄だったのかというと、決してそういう事は無いのです。その時はそれが
最高だったのですから。

でも、ヨットはセーリングする為にある。キャビンは泊まる為にある。その通りですね。どちらを優先する
かはそれぞれですが、日本ではとにかくファミリークルージングが無い。それなら、セーリングを優先
して考えたら良いと思いますね。泊まろうが泊まるまいが、そんなことはほっといてくれ。でも、セーリ
ングだけは、やってほしい。外国人が何を言おうが知ったこっちゃ無いのですが、セーリングもしない、
泊まりもしない、それでいて、マリーナにはたくさんのヨットが浮かんでいる。日本人は解らない。という
より、日本人はセーリングが好きな国民なんだなとしたいです。

日曜になったら、うじゃうじゃヨットが出て、みんなセーリングを楽しんで、帰っていく。一生懸命仕事
して、セーリングも堪能して、人生を謳歌している。日本人は自分達のやり方で、エンジョイする、
ハッピーな人種なのです。それで、日本独自のヨットの使い方が出てくる。欧米人は別荘代わりに使う
かもしれないが、日本人はセーリングを堪能している。そういう文化なのです。それで、ヨットのエッセン
スを堪能できるヨットが受け入れられる。欧米とは違うんです。考え方もスタイルも違う。だから、我々
は欧米人と同じじゃいけないのです。

こうなると、日本人が発明する艤装品なんかが出てくるかもしれない。どうやったら、快適なセーリング
ができるか、そういう発想が出てくるかもしれません。それで素晴らしい物が出てくると、それが世界
に出ていきます。日本人が生んだ文化の象徴のような物。これでヨット文化が日本に根付く。どんな
ヨットだろうが、使わなければ、何も変化がありません。使えば、ああしたい、こうしたいが出てくる。
そうすれば、工夫が生まれ、それが独自の発展となり、文化となる。そこまでいけば、もっと楽しくなる。
日本はヨットに関しては、まだまだこれからです。どうこう言う前に、まずは使う事。自分の最も楽しめる
方法で使う事が最優先ではないでしょうか。そうすれば、次の場面が見えてくる。使わなければ、何も
始まらない。使うにあたっては、あれがあれば、これがあればと思うかもしれませんね。でも、無い物に
気を回すより、今は、まずは、今あるものをどうやって楽しむか。今、何ができるか、これからスタート
した方が良さそうです。

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