第十二話 クルージングを目指したのは間違い
最近、ヨットを満喫している人と、そうで無い人の格差は大きくなってきた様に感じます。昔の方が、全体的に稼働率は高かった様に思います。マリーナの駐車場、昔、週末に行きますと、駐車スペースを見つけるのは難しかった。でも、最近は、昼過ぎに行っても、空いてます。何故。、こうなってきたのか? 独断と偏見で言えば、その原因は、これまで目指してきたものが間違っていたのではないか? 進化するに連れて、ヨット人口は増えても良かったはずと思いますが、そうはなってこなかった。 それは何も経済的な要因ばかりでは無いと思います。 敢えて言えば、その最も大きな要因は、クルージングを目指した事ではないかと思っています。目指したことが間違いだった。そう申し上げます。では、クルージングの何が間違いなのか? 昔は、結構レースを楽しむ人は多かった。ヨット談義なんかも、酒飲みながら盛んに行われていた。もちろん、セーリングも含めて、多くの人達がヨットをセーリングして楽しんでいた。それがいつの頃からか、これからはクルージングだという事に変わり、ヨットもクルージング艇が圧倒的に多くなっていきます。その辺りから、クルージング艇は昔とは違って、キャビン拡大競争が始まる。 その頃、圧倒的な欧米市場において、彼らの多くが、ヨットを別荘的に使う。ヨットに住んでしまう人達も多いし、毎週末はマリーナに行って、ヨットに泊まり、月曜の朝、マリーナから出勤する。そういうのが流行った。そうなると、造船所は、それに合わせて、キャビン拡大に走ったのではなかろうか?サイズは同じでも、幅は広がり、フリーボードも高くなる。ボリュームが全然違うわけです。住まうにはその方が良かった。 この事はレース離れ、セーリング離れを促します。そうなってくると、クルー不足にも繋がる。何しろ、クルーになっても面白く無いわけです。それで、欧米でも、動かないヨットが多くなっていった。もちろん、一部はレースを楽しみ、一部はクルージングを楽しんだ。でも、一部に過ぎない。 それでも欧米では良かった。何しろ、別荘としてヨットを楽しむ事ができた。しかし、日本の事情は違います。ある日、オーストラリアからヨットでクルージングに来ていた人、土曜の夕方、全員がマリーナから家路に着くのを見て、不思議に思った。明日は日曜なのに、何故、みんな帰ってしまうんだろう? 聞けば、オーストラリアでは、殆ど、みんながヨットに泊まる。それが普通なのだそうだ。ところが、日本スタイルは違ったわけです。 という事は、日本人はヨットを別荘的には使わないという事です。日本でも、、広いキャビンが良いとされた。しかし、それは何の為だったんだろうか? では、クルージングするのか? ここがまた問題で、旅の往復と現地での時間を考えれば、仮に、一週間の休みでも、近所にしか行けない。日本では、3週間、4週間なんて連続した休みを取れない。一、二週間程度を、年に二回程度しか取れない。日本で休みは、年間トータルすれば結構あります。でも、飛び飛びが多く、まとめた長い連続休暇なんて取れない。そうなると、クルージングに行っても近場しかいけない事になる。クルージングとは言っても、現実ににクルージングできるチャンスはそう多くは無い事になります。という事は、日本人はクルージングにも行けないという事になります。 では、近所でセーリングするか? しかし、でかいボリュームのヨットは、それも、気軽さを失わせる。シングルもしにくくなるので、クルーが要る。でも、クルー不足と言われる。たま〜にお祭りレースなんかだと、この時ばかりはと、かなり多くのクルージング艇が参加します。でも、日常的に動くヨットは少ない。 やっぱり、クルージングを目指したのは間違いでは無かったか? では、引退したら本格的にクルージングができる。でも、これまでヨットにたいして乗ってこなかったなら、それもそう簡単な事では無い。もちろん、一部の人達はクルージングを楽しまれる。でも、大半では無い。一部です。大半は動かないのです。クルージングにいく暇が無いなら、日曜のレースぐらい参加してきたなら、或は、セーリングさえ楽しんできたなら、引退後のクルージングも可能だったろうとは思います。 頭の中で想像して、クルージングに行きたいという気持ちは解ります。しかし、現実に行く暇は無いし、かといって欧米人の様にヨットに泊まる事も無い。元々、民族的なのか、文化なのか、何のか、ヨットを別荘的には使いません。一部のレースを楽しむ人達、そして、一部のクルージングを実践する人達、また一部のセーリングを楽しむ人達、彼らとの、楽しむという格差は大きくなってきた。それが、今日のヨット界の現状ではないかと思います。日本では、クルージングを目指すべきでは無かった。 では、どうだったら良いのか? 答えは、簡単で、誰でも簡単にできて、しかも近所でできて、面白い事、それはセーリングです。デイセーリングは日本発のコンセプトであっても良かったのではないかと思います。これは何も、ピクニックばかりを指すのでは無く、スポーツセーリングもあります。 多くの方々が、少なくともセーリングを楽しむ事さえしていれば、仕事引退後はクルージングにだってもっと行けたはずだろうと思います。ただ、どのヨットも、ボリュームばかりでかくなってしまった。そうい事情もある。しかし、それでも、セーリングを目指す事を考えた方が良かったのではないか? その方が、遥かに面白かったのではないか? 稼働率も高くなったのではないか? どんなスタイルであれ、日常的にヨットに関わり続けたら、たまに、レースも、たまに泊まりも楽しめたのではなかろうか?もちろん、仕事引退後のクルージングだって、もっと行けたのではなかろうか? しかし、欧米の事情も変化してきています。 続く・・・・・・・・ |