第八十話 Biehl 8.8.

さて、次はドイツ製のデイセーラーです。サイズは29フィート。排水量は1,690kgで、バラストは630kg。セール面積は32uです。これらのデータを見ますと、昨今のヨーロッパにおけるハイスピードヨットに比べたら、マイルドなスポーツ感です。SADRは22.8で、程良い感じだと思います。比較的、セールが小さいので、特にシングルなんかでは、楽でしょう。それでも、排水量が軽いので、この数値を達成できてます。

排水量からバラスト重量を差し引けば1,030kgです。これは結構軽い。部分的にカーボンなんかも使っている様です。この排水量に何kgのバラストを設置して、何uのセールを設置するか?これで、随分変わります。ちょっと面白い計算をしてみます。この船体に、後述しますが、アレリオン28と同じ990kgのバラストを設置すると、排水量は2,050kgになり、SADRは20になります。これでも充分だとは思います。さらに、セール面積を50u(オリジナルのバラスト重量対セール面積の比率)にしますと、SADRは31にもなります。どの辺りが良いのかは、もう考え方、乗り方次第になります。コストの問題もありますし。

多くの、特にヨーロッパ系のハイスピードを狙うヨットは、当然ながら、排水量を軽く造ります。という事は、どうしてもバラストの絶対重量も低くならざるを得ません。もちろん、極端に船体が軽ければ別ですが、そうなると、随所にハイテク素材を使うとか、キャビン無しとかになってしまいます。普通は、1,690kgの排水量で、1,000kgのバラストというわけにはいかないでしょう。これは、より軽いヨットを造るうえでの宿命ですね。それで、どうバランスさせるかになると思います。

比較するうえで参考になるのが、アレリオン28です。排水量は2,565kgあります。Biehlに比べたら重い。セール面積はほぼ同じで、32.7uです。当然ながら、フルセールではBiehlの方が速い。しかし、アレリオンのバラストは990kgですから、強風においては、アレリオンの方が強い。アレリオン28のSADRは17.7です。

この二つは典型的なんですが、フルセールで速い方が良いか? それとも、強風に強い方が良いか? Biehlはアレリオンより早めのリーフになるでしょう。でも、微軽風とかは、Beihlの方が速い。と言っても、どんなハイパフォーマンスヨットでもそうですが、微風は所詮微風ですから、だったら、微風用のセールを展開すれば、アレリオンのSADRは35とか36とかになり、アレリオンだって微風でもスイス走れる。どっちが良いか? どっちも有りで、考え方次第ですね。いつも、ここの処で迷ってしまうかもしれません。ただ、どちらにしても、第三のセールを使えれば、もっと面白くなるとは思います。それに強風時のリーフを加えて考えれば、全体像が見えてくる。

さて、Biehlはクラシック系とモダン系の二種類のデッキを用意しています。お好みで選ぶ事ができるというのは良いと思います。
  
 
 

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