第三十六話 アレリオン誕生物語 T




名艇と呼ばれるヨットには、その誕生物語があります。ここでは、今日でも、ベストセラーであり続ける
アレリオン28が誕生した時の様子を三回に渡って、ご紹介したいと思います。


       
 
   Nathanael Herreshoff デザイナー
   1893年から1920年にかけて、アメリカズカップ艇をデザインし、その
   革新的デザインはハーショフ時代を築き上げています。

    Vigilant(1893年) この時は彼自身がヘルムを取っています。
    Defender(1895年)
    Columbia(1899年&1901年)
    Reliance(1903年)
    Resolute(1920年)
    
    Defender(1895年)

1912年、彼は自分自身のプライベートヨットとして26フィートをデザインし、艇名をアレリオンと名づけています。その美しいデザインと高い帆走性能は、当時、高い評価を受け、現在では博物館に保管されている程です。また、今日においても、その人気は高く、オリジナルのままのデザインで、当時のまま、木造で建造され続けています。


         当時のAlerion(1912年建造) 26フィート

そこから約70年を経て後、1985年から翌年にかけて、Ralph Schactor なる人物がデザイナーのCarl Schumacher氏と出会い、新しいデザインの相談を持ちかけます。Schactor氏はその当時27フィートのレーサーを所有しており、非常に気に入ってはいたが、レース自体に疲れてきた時で、彼が求めたのは、イージーハンドリングで、シングルでも友人とでも楽にセーリングが楽しめるヨット、それでいて帆走性能の高いデザインはできないか?また、クラシックなセンス、特に、Herreshoff 氏デザインのアレリオンに魅せられている事を告げます。

レーサーでは無く、純粋にセーリングを楽しめるヨットがテーマです。その応えとして、Schumacher 氏は 28フィートのデザインを描きます。 それを見ると、”水線から上部は確かに、伝統的なセンスを備えていた。しかし、水線以下は Herreshoff 氏のデザインとは全く違っていて、フィンキールを持つ、最新のデザインそのものだった。上部は確かに、Herreshoff 氏思わせるデザインであったが、むしろ彼の1912年のアレリオンよりも美しいものでした。そして水線以下のモダンな形状は新旧の調和を見出し、フラクショナルリグに、ライフラインを設置せず、低いフリーボードとバウからスターンにかけてのラインやトランサムがカウンタースターンにデザインされ、パーフェクトなプロポーションに見えた。停泊中でさえ、はためく旗を見ながら、このヨットはセーラーとしての魂をかきたてるものであった” と、オーナーであるSchactor 氏は言っています。アレリオン28の誕生です。   続く・・・・・・・



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