第四話 大型デイセーラーのメリット

    

    40フィートオーバーのデイセーラーを三艇ご紹介しました。 サイズが大型化する事によって、その特性を生か
    したデザインが生まれています。お気づきの通り、この三艇が目指した方向性は、それぞれ違っています。
    以前、何故デイセーラーを大型にする必要性があるのかと聞かれた事がありますが、その答えが、この三つの
    方向性にあると思います。

    ひとつは、キャビン空間を広げて、クルージング性を加える方法。後の二つはバラスト重量とセール面積の配分
    に関係してきます。排水量、バラスト重量、セール面積はそのヨットのパフォーマンスを決める重要な要素です(も
    ちろん、それだけではありませんが)。そして、それはヨットが大型化する事によって、それらの配分がよりし易く
    なり、よって、安定性を高めたり、パフォーマンスをもっと上げたり、その両方だったり、或いは、ある程度高い
    パフォーマンスを維持しつつ、より操作を容易にしたりとか、そういう配分がよりし易くなります。
    
    大きなサイズのデイセーラーは、この三つのどれかに属する事になります。いろんな考え方がありますから、
    どれが優れているというわけでも無く、どれを求めるか次第になります。その時、そのヨットの目指している
    方向性をきちんと見て判断する必要はあると思います。

    サイズアップでもうひとつ異なる事があります。これは、ヨットによっては33フィートあたりから見られますが、
    操作が電動ウィンチになる事です。要求される力は、ステアリングホィールを回す力と電動ウィンチのスイッチ
    を押す力ぐらいでしょうか。デイセーラーは気軽さが大事ですから、この事もおおいに気軽さに寄与しています。

    大きいサイズは、マリーナからの出し入れには少々慣れが必要にはなりますが、出てしまえば、むしろ楽に
    操船できる。水線長も長いので、ハルスピードも高くなります。因みに、ハルスピードはプレーニングしていない
    状態での、理論的限界スピードで、水線長が長い方が速く走れます。クラシック系のオーバーハングのあるヨット
    でも、ヒールすれば水線長は長くなります。

    これまで、いろいろ見てきましたが、選択の判断はSADRが重要にになると思います。デイセーラーの選択は、
    そのパフォーマンスの選択と言って良いと思います。もちろん、どれが良いとかでは無く、どのレベルが自分に
    合うかになります。そのSADRをイメージし易い様に独断と偏見で定義するならば、以下の様にしました。 
    SADR15〜20:クルージング艇レベル、 21〜23:ハイパフォーマンスクルーザーレベル、 23〜25:
    レーサークルーザーレベル、 26〜28:クルーザーレーサーレベル(レーサー色が強い)、 29以上:
    レーサーレベル。 あくまで目安です。適当です。ただ、デイセーラーの場合、より小さなセール面積で、その
    パフォーマンスが達成できる。という事はより楽に操作ができるという事になると思います。
 
    デイセーラーは、全てのレベルのパフォーマンスがありますから、気に入ったデザインとサイズ、そしてパフォー
    マンスを吟味されれば、良いかと思います。そして、さらに吟味するなら、その選択した候補から、セール面積と
    バラスト重量を比較してみます。同じ様なパフォーマンスなら、セール面積が小さい方が、特にシングルでは
    扱い易くなりますし、バラストが重い方が安定性も高くなります。とは言いましても、キールに関しては、デザイン
    の影響もありますので、比較する場合、そこらあたりの考慮も必要かと思います。

    さて、デイセーラーのメリットは、気軽にシングルで、スイスイと高いパフォーマンスを味わえる事です。そのパフォ
    ーマンスも選択幅が広いですから、どなたにでも合うヨットが必ずあります。セーリングに面白さを発見すれば、
    一生、楽しむ事ができるのではないでしょうか。デイセーラーのモットーは、美しいヨットを美しく走らせるという事、
    気持ちの良いセーリングをして頂きたいと思います。
 
    

次へ       目次へ