第七十話 ヨットの味わい



      
速いヨットは面白い。自分の技術を高めて、頭脳を使い、縦横無尽に走る。そういうスタイルは、当然スポーツセーリングと称して、面白い事は間違い無い。でも、一方では、そのヨットの持つ味わいを楽しむというスタイルもあります。そんな時は、気持ちをゆったりと、そのセーリングの持ち味を楽しみたい。

クラシック系デザインのデイセーラーは、そういう狙いもあると思います。クラシック系に特徴的な、前後のオーバーハングは水線長を短くしてしまうので、スピードという面では、その分不利になりますが、でも、ヨットの意義はそれだけじゃないという事を示唆しています。

アメリカ系デザインのデイセーラーは、クラシック系ばかり。もちろん、高い帆走性能を狙っているし、排水量も軽くする事もやっている。でも、敢えて、みんなクラシック系デザインばかり。一方、ヨーロッパ系デザインでは、モダン系が多く、水線長もできるだけ長く取ります。スターンも絞っていない。もちろん、ヨーロッパにもクラシック系はあります。でも、敢えて、水線長は長くしたりとか、スピード重視なんでしょうね。オランダのイーグルヨットは例外で、前後に長いオーバーハングを持ちます。

おっと、そう言えば、あのドラゴン、ヨーロッパでは今でも健在で、もちろん、レースも盛ん。ヨット文化が進んでいる国では、いろんなヨットがあって、いろんな使い方があって、でっかいのから小さいの迄あって、実に面白い。文化が根付くってそういう事でしょうね。社会にヨット文化が広がって、個人に達すると、個性的である事に躊躇が無くなります。やっぱり、スポーツであれ、味わいであれ、美しいヨットを美しく走らせたい。

        

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