第三十三話 排水量/バラスト/セール



      
前話でB 33について記載しましたが、同じ様なサイズをもう一つ取り上げてみます。HOOD 32です。
数値的には32ですが、全長は9.88mで B33より11cm短いだけです。

このヨットにはキャビンが一切ありません。それで排水量はかなり軽い。わずか1,281kg しかありません。B 33 の半分以下です。 当然ながら、バラストも軽くならざるを得ないわけで、606kgです。排水量を軽くすると、バラスト比47.3%もあるんですが、実質重量は606kgです。さて、これにどれだけのセール面積を持たせるか?

当然ながら、でかいセールにするとバラストが重く無いので、ちょっと吹くだけですぐにリーフという事になってしまいます。それで、結果はわずか26.5uです。B33のメインセール1枚の半分強、ジブよりちょっと大きいぐらいです。それでも、SADRはこれだけ排水量が軽いわけですから、22.8と、一般的には結構良い感じのスポーティーさがあります。

船体を軽くするにも限界があって、このヨットなんかですとキャビン無しにして軽くしています。でも、バラストも軽くならざるを得ないので、究極の軽さにすると、逆にSADRは高くできないという事になるかと思います。但し、その代わり、わずか26.5uという小さなセール面積でも、SADR22.8を達成できる。これなんかは、超楽にスポーティーさを感じれるセーリングができると思います。絶対的スピードはB 33や MD33には敵わないけど、遥かに、気楽にそこそこのスポーティーセーリングが楽しめる事になります。

もし、兎に角ハイスピードのヨットを建造したかったら、排水量を軽くするだけでは駄目で、強風時も考えたら、バラスト重量が決め手になるのかもしれません。そのうえでSADRを高める。そうなると、ブレンタ氏のアイデアの様になっていくのかもしれません。

バラスト重量:フルセール面積、バラスト重量:1ポイントリーフ面積、バラスト重量:2ポイントリーフ面積
そのうえでフルセールでのSADRです。例えば、HOOD 32に1,200kgぐらいのバラストを設置しても、排水量は1,875kgにしかなりません。それで、セールをでかくすれば、かなり速いヨットになります。MD33と同じセール面積(54u)を持たせると、SADRは36にもなります。その代りキャビン無し。しかも、MD33より強風時の安定性も高い。しかし、クラシック系にこういう設定をしても。水線長が短くなりますので、あまり意味が無い。それで、小さなセールのメリットを最大限に活かしたヨットだな〜と思います。モダン系デザインで、キャビン無しにして、こういうヨットを造りますと速いのでしょうが、その意味があるか無いか?難しいです。

排水量/バラスト/セール面積 このバランスはとっても難しいです。それで、幸いにも、我々がデザインするわけでは無いので、完成したヨットのSADRを見て、その上で、バラスト重量、セール面積と見て行けば、だいたいの処は想像できるのではないでしょうか。

        

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