第六十二話 セーリングの妙を楽しむ



      
セーリングでは強風におけるスピードを楽しむという面もありますが、スピードもさることながら、セーリングにおける妙を楽しむという事もあります。考えて見れば、ヨットの絶対スピードは遅いわけで、但し、感覚的には速い。という事は、どういうわけか、ヨットスピードは感覚的に増幅されて感じられるのかもしれません。誰もが、意識せずとも、感覚が鋭敏になる。それがヨットです。

1ノットスピードが違えば、大きなスピード差として感じられます。しかし、わずか時速にして1.852kmに過ぎないんです。人が歩くスピードは、平均で時速4kmだそうですから、1ノットはかなりゆっくり歩く程度のスピードです。10ノット出るなんて、ヨットではすごいスピードですが、でも、わずか18.52kmに過ぎません。という事は、我々の感覚は、ヨットに乗るだけで鋭敏になるのかもしれません。モーターボートなんかですと、20ノットでも速いとは感じません。でも、ヨットは違います。ヨットのスピード感は、陸上での感覚の10倍ぐらいになるのではないかと思う程であります。

つまり、我々は、ヨットに乗る時、10倍の感覚でそのスピードを感じる。だから、トラベラーを使って、バングを使ってとかやります。その差僅かなスピードの違いかもしれませんが、でも、ヨットだからこそ、それが大きく感じられます。と言いますか、ヨットだからこそ、それが解るのかもしれません。だから、そこを遊ぶのがヨット、そういう風に出来てるのではないでしょうか?

プレーニングさせてより速く走る事もセーリングのひとつですが、ゼロコンマ何ノットを楽しむのもセーリングです。そして多くの場合はプレーニングしていない状況が多いですから、つまり、セーリングは繊細にその妙を味わう事かもしれません。

という事は、乗り手が鋭敏な感性を持った方がより楽しめるという事になります。その為には、心がセーリングあるという事が必要になる。他の事考えたりしていると解りませんね、面白さが。でも、解ると、とっても面白い。セーリングを意識すれば良いだけです。それを続けていきますと、どんどん鋭敏な感性なっていきます。無意識で10倍になるとしたら、意識的やれば15倍と20倍にできるかもしれません。だから面白さが解ります。

という事は20倍の感性で10ノットを味わったら、それゃあ恐ろしい? でも、大丈夫、別に倍のスピードに感じるわけではありません。繊細さが解るという事でありますから。

        

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