第八十二話 セーリングの魔力


      
セーリングレベルの如何を問わず、セーリングを楽しむ。それがヨットのヨットたる所以です。そうじゃなきゃ、ヨットである必要は無い。むしろ、沿岸のクルージングならモーターボートの方が手っ取り早い。いずれにしろ、エンジンで行くんですから。でも、セーリングはモーターボートじゃ味わえない。それが、ヨットを選択する理由でもあります。

セーリングを楽しむというのは、ヨットに乗っていれば良いというものでも無いと思います。風で走るヨットに乗る。否、風でヨットを走らせる。それを楽しむ事がセーリングを楽しむ事になると思います。そのセーリングを重要視して行ったら、デイセーラーという事になり、旅の方を重視するならクルージング艇という事になる。ただ、クルージング艇でも、旅をしてない時はセーリングを楽しんで欲しいと思います。

風が弱くても、スーっと滑らかに走れば、絶対スピード値は低くても、気分は最高になれる。わずかな加速感でも、興奮する事もある。実に人間の感性を刺激する乗り物です。そんなスピードはモーターボートならいとも簡単、それどころか退屈感さえ漂う。しかし、セーリングした途端、人間の感性はがらりと変わってしまう不思議な魔力があります。

そのセーリングの魔力を堪能してこそ、ヨットライフは充実していくのではないかと思います。ヨットを所有していながら、このセーリングを味あわないのは実にもったいない。そのセーリングがどんなセーリングだろうが、頭脳と心がセーリングとともにあれば必ずセーリングの味わいが伝わってくるかと思います。そうすると、それが徐々に発展していきます。セーリングって魔力があるんです。それを知っている人は目の前の海で楽しむ事ができます。風は変化し、海は変化し、そのバランスを堪能する事ができます。多くの人達が知らない世界が自分のものになります。

        

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