第九十四話 バランスポイント


      
セーリングのスピードと安定性をどこでバランスさせるか? 見た目のデザインもさる事ながら、これらはヨットのキーポイントになると思います。これはスピードを優先するか、安定性を優先するか? スピードは求めればきりがありませんが、どの程度なら面白さとして成立して、尚且つ安定性にも満足できるかというポイント探しという事になると思います。

クラシック系デザインは、スピードポイントをSADR20前後から25辺りに置き、モダン/クラシック系デザインはSADR25前後から30前ぐらいにおき、モダン系はさらにその上として30前後以上から35辺りに及ぶモデル群もあります。一部にはもっと高い数値のデイセーラーも出てきています。

同じサイズであるなら、SADR値が高い程、強風時の安定性は低くならざるを得ないので、早目のリーフという事になります。そこで、ヨットサイズを大きくする事で、この安定性を確保できるようにももっていく事ができますし、或いは、もっとスピードを求める事も可能で、それがデザイナー次第という事になります。サイズが大きくなる事のメリットは、スピードをさらに求める事も、安定性を確保する事も、その両方のバランスを求める事もできます。

さて、問題はどの程度のスピード性能で良いのか? という事になりますが、これは各人のこれまでの経験や価値観から来るものであり、良いとか悪いの問題では無くなります。安定性が低くなっても、リーフで対応すれば良いし、フルセールで走れる風速なら、そのスピードが面白いという考え方もありますし、スピードはそこまで無くても、そこそこ速ければ、フルセールでの安定性の高さを享受できて良いという考え方もあります。

そこで、他のジャンルと比較しますと、30フィート辺りのクルージング艇でSADR15前後から18程度、レーサークルーザーで25前後、さらに内装を簡素化しレース寄りにしたたレーサークルーザーで25〜30前程度、レーサーならそれ以上という感じかと思います。つまり、一般的には20前後で結構なスイスイ感を味わえると思います。これ以上はスポーツ度をどこまで高めるかの各人の価値観次第だと思います。

 Blu30、排水量はわずか1,500kgそれに対し
 てセール面積は47uで、SADRは36.5に及び
 ます。

  








  
  これに対してアレリオン30の排水量は倍近い
  2,914kgにセール面積は43.2uで、SADRは
  21.5です。










同じ30フィートですが、両者の性格は全く違います。セール面積は3.8uしか違わないですが、排水量が圧倒的に異なります。よって、スピードと安定性が全く違ってきます。どっちが良いかでは無く、どっちを好むかになると思います。スポーツ度の違いです。ここに上げたのは極端な例かもしれませんが、いずれにしろ、排水量とセール面積、それにバラスト重量とのバランスを見る事が重要だと思います。ちなみに、30フィートクラスのクルージング艇の排水量は4tを越えます。
        

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