前話でデイセーラーと他のジャンルのヨットを比較して、どういうパフォーマンスになるかがだいたいのイメージを持って頂けたのではないかと思います。では、もっとデイセーラーを見て行きます。今度はデイセーラー同士の比較です。
アレリオン30はクラシック系のデザイン、一方、オプティオ9はモダン系です。それぞれのデザインの中で、いろんなモデルがあり、それぞれ性能は多少は異なるにしても、だいたいそのデザインの特性内です。
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アレリオン 30クラシック系 |
オプティオ9 モダン系 |
全長 |
船体長と同じ |
船体長と同じ |
船体長 |
9.17m |
8.99m |
水線長 |
7.44m |
8.57m |
幅 |
2.67m |
2.54m |
吃水 |
1.52m |
2.15m |
排水量 |
2,914kg |
1,700kg |
バラスト重量 |
1,202kg |
700kg |
セール面積 |
43.2u |
43.5u |
SADR |
21.4 |
31.0 |
アレリオンの水線長が短いのは、前後にオーバーハングを設けているからです。これはクラシックデザインの美しさの特徴でもありますから、こういうデザインにオーバーハングは欠かせません。スピードを多少犠牲にしてでも、このラインはキープします。と言っても、ヒールしますと水線長は長くなります。これもクラシック系デザインの特徴でもあります。
次に気が付く事は、セール面積はほぼ同じなのですが、排水量が圧倒的にオプティオの方が軽い為、SADR値も大きく違っています。前話で書きました通り、沿岸用クルージング艇(30フィートクラス)で、SADRが15〜17あたりですから、それが21.5ありますと、結構スイスイ走る感じを受けます。だから、普通は、この辺りの数値で充分楽しめるかと思います。
しかし、個人の好みによっては、もっとスポーティーにスピードを楽しみたいという方も多く、そういう方々がモダンデザインを求められます。その場合、もうひとつの特徴として、バラスト重量の差があります。
オプティオは船体を軽量化しているわけですが、同時にバラストも軽減しています。これで全体の排水量が軽くなります。そうすると、上りにおける安定性の問題が出てきます。つまり、上りにおいて、アレリオンより早めにリーフする事になります。しかし、リーフしても速ければ良いではないかという考え方です。スポーティー性の高いヨットです。或いは、バラストをもっと重くして排水量は重くなるけれども、セール面積を増やしてSADR値を高めるという方法もあります。この辺りはデザイナーの考え方次第になると思います。
それに対して、アレリオンは、もちろん船体の軽量化を図りますが、オプティオ程では無く、バラスト重量も重い。よって安定性も高いです。つまり、両艇の違いは、デザインもありますが、運動性能として、スピードと安定性のバランスにあります。そして、この特性は両艇独特の特性では無く、両艇が属するデザイン共通の特性です。もちろん、モデルによって多少は違いますが、この特性を逸脱するものではありません。
どっちが良いかという問題では無く、どっちの運動性能が、自分の感性に合うかという問題です。クラシック系では、SADRが20前後から25ぐらいまで、モダンデザインはだいたい30オーバーです。この中間には、モダン/クラシック系デザインがあります。それで、もし、デザインはクラシック系が良いが、スピードはもっと速いのが欲しいと思われる方がおられたとしたら、その解決方法はひとつ、ヨットのサイズアップによってもたらされます。また、モダンデザインで高い性能を得ながら、もっと高い安定性を求めるとするなら、これも、サイズアップする事で可能になります。
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