第三十七話 クローズ


      

ジブが小さくなり、より内側に引き込まれるようになって、上りの角度は良くなってきた。しかし、スピード面を考えると、上りのスピードには限界があって、速ければ速い程、見かけの風は前側に回ってくるので、限界が見えてくる。それ以上のスピードを求めるとするなら、下り側に求めるのは理屈に適っている。

という事で、大きなメインとジェネカーやコードゼロという組み合わせになっていく。それでも、上りも重視していけばスタビリティーを確保する必要が出てきて、バラストの重さとかが重要になる。しかし、それは排水量を重くする。という事で考えられるのはヨットのスピードポテンシャルをどうするかにかかってくる。

ある程度、一般的には十分なスポーツ性を持っているが、そこまでは結構重いバラストが設置してあって、スタビリティーも高い。もちろん、これはセール面積に対するもので、バラスト比ではありません。これでも十分だと思いますが、さらにそこからスピードを目指す場合は下りにおけるスピード重視という事になり、セール面積に対するバラスト重量が低くなるのは仕方ない事ではないかと思います。問題はそこまでスピードを求めるか否か?選択する側に投げられたボールではないかと思います。

セール面積/排水量比が20前後とかならかなりスタビリティーも高い。25でもそこそこ。そこからもっと上になっていくと、セール面積に対するバラスト重量は下がってくる。排水量がかなり軽くなって、当然ながらセール面積に対するバラスト重量も軽くなる。それが良いかどうかでは無く、スピードに対する選択側の問題だと思います。これはキャビン重視で排水量が重たくなって、それでバラストが相対的に軽くなるというのとは次元が違う話です。

デザイナーがどういう意図を持ってデザインしているか?そこを考えると面白いですね。それに自分のセーリングを重ねていくと、どこら辺りのポテンシャルが良いのかが解ってくると思います。兎に角、スピードをより求めるとしたら、大きなセール面積に対してできるだけ排水量を軽くする必要があって、排水量が軽くなればなる程、バラストも軽くなる。もちろん、超ハイテク技術で船体を極端に軽くする代わりに、バラストを重くするという方法もある。しかし、そこまでやったら、バラストも軽くするともっと速くなるし・・・
どこでバランスを取るかがデザイナーですね。

セール面積、排水量、バラスト重量、これだけでもじっくり比べてみると、デザイナーの意図が見えてくるんじゃないかと思います。でも、絶対スピード値の速さもありますが、上りの醍醐味も味わいたい。スピード値が全てでは無い理由のひとつです。従って、SADR値が20前後から25ぐらいまでというのは、一般的に良い選択ではないかと思います。充分スポーティーだと思います。もちろん、スピード狂は別ですよ。

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