第六十話 センサー


      

舵は針路を変える為、或いは、今の針路を真っすぐ保つ為。いずれにしろ、針路に関わる。でも、それだけじゃない。ラダーの先にはティラーが繋がれ、それを握る手に感じるものがある。抵抗が増加したり、軽減されたり、いろんなフィーリングが伝わる。つまり、ラダーはセンサー。舵は針路を決める為だけでは無く、感じる為にある。

一般的にはホィール式の方に人気がある。でも、ティラーはダイレクトに舵に繋がるので、センサーとしては効率が良い。一方、ホィールはラダーシャフトに扇状のコートランドが設置され、それからワイヤーでホィールに繋がれる。ダイレクトでは無い間接的なだけに、センサーとしてはやや鈍る。

あるオーナーはホィールをステンレスから大口径のカーボンに交換したら、微妙な変化も伝わってくる様になったと言われた。成程、興味深い。どちらにしても、やっぱりセンサーは鋭敏な方が良い。ティラーとどちらが良いかは好みです。

セール操作によって、風の変化によって、伝わってくる抵抗感が違ってくる。微妙な変化が解るなら、それだけセーリングを楽しめる事になる。だから、舵を握るのは面白い。だから、オーパイなんかに任せるなんてもったいない。繊細な変化、まるで釣りをしている時の浮きを眺めている様な緊張感。

手は舵を感じ、体は船体の動きを感じ、目はセールや様々を観察する。みんなセンサーみたいなもの。そのセンサーを通してヨットを走らせる。シートを引く時の力加減もセンサーになる。繊細なセンサーを心得たいと思います。そうしたら、感じるセーリングがもっと面白くなるかな。これもスピードだけが全てでは無い理由のひとつだと思います。そうか、セーリングが奥深いと言われるのは、我々の繊細な感覚故ではなかろうか。

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