第七話 進化のテーマ



      
より速く走れるようにする為に、排水量を軽くする為の努力がなされます。しかし、排水量を軽くすればする程、バラスト重量も軽くなる。幅の広いヨットなら、その幅でスタビリティーを少しでも確保する事はできるかもしれない。クルーの体重でスタビリティーを確保する事もある。しかし、デイセーラーはシングル想定があるし、みんな細身です。という事は、スタビリティーの多くはバラスト重量とその形状及び深さにかかってくる。

とは言っても、そのバラスト重量とセール面積との対比になるので、同じバラスト重量でも、セール面積が小さいなら、安定性は高くなる。つまり、排水量、バラスト重量(キール形状も含めて)、セール面積、これらのバランスをどう取るかがデザイナーの頭の中にある。

いろんなデザインがありますが、上記三つのバランスポイントが大きく影響するのではないでしょうか。ただ、この三つの中で、セール面積はリーフして変える事ができる。これがポイントになります。セール面積は変えられる。ならば、強風時にはリーフすれば良い。どこのバランスがベストというより、どういうバランスが自分に合うかという事になると思います。

軽風でのスピードではより軽く大きなセール面積の方が速い。強風では安定性が高くて、より大きなセール面積で走れる方が速い。とは言っても、全ては、排水量とバラストとセール面積とのバランスによってもたらされる。求めるパフォーマンスのバランスポイントになります。

よって、セール面積/排水量とバラスト重量/セール面積の比較が必要ではないかと思います。もちろん、キールデザインの影響もあります。しかし、どんなデザインをしても、バラスト重量は排水量に含まれる。

今後、いろんな考え方が出てくるかもしれません。例えば、ワンポイントリーフしたセール面積を軸に考えれば、セールは大きく取れる。軽風では本当のフルセールにして、通常はワンポイントで走って、強風なら2ポイントリーフにする。セールは面積を変えれますから、いくらでも柔軟に対応できる。しかし、まあ、そこまでしてという気も無いではありませんが。

しかし、進化を目指すのが造る側の常です。その進化をスピードをテーマにするのか、或いは、他の何かか?と同時に使う側はどこに進化を求めるのか?スピードは最も解りやすい進化のひとつです。それがレースによって表現されます。でも、スピード以外のセーリングの進化とは何でしょうか?難しいテーマです。スピード以上に難しい。これは多くの場合、便利さになっていくと思われます。しかし、前にも書きましたが、便利さと面白さは異なる次元にあると思います。面白さとは何か?結局、それはレースという解りやすいテーマになってしまいます。そうなるとスピードになる。デイセーラーはレーサーとは違うテーマを持つが故に、幅の広いセーリングパフォーマンスが存在します。そこが他のジャンルのヨットとは違う処です。



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