第八十六話 最高の無駄を遊ぶ


      

ヨットは無駄な物ではありますが、中でもデイセーラーは最高の無駄と言って良いかもしれません。大きなキャビンがあれば大勢で宴会できて、酔っぱらってそのまま寝る事もできる。レーサーなら、レースを最高に楽しむ事ができる。ヨットは無駄とは言いながら、実はとっても役に立っている。

ところが、デイセーラーときたら、大勢で宴会なんかできません。キャビンは窮屈だ。レースにしたって、ワンデザインなら最高に面白いと思いますが、日本では無理だし、一般レースに参加したら、本格レーサーには勝てない。じゃあ、デイセーラーとは何だ?

ヨットは無駄とは言いつつ、誰もがどこかで有効利用を考えてしまう。でも、デイセーラーの場合、その有効利用を手放す事になりますが、逆に、その事で、とっても自分自身が解放される事に気が付きました。キャビンで大勢はあり得ない、レースに参加しても勝ちは無い。そうすると、そういう事に対して期待しない事になります。残るはセーリングだけです。

そういう手放しが心に定着した時、気持が実にスッキリし、楽になり、素直にセーリングを楽しむ事ができる事に気が付きました。それがデイセーラーの在り方ではなかろうか?何かの役に立てようという意識が全く無くなった時、そのヨットのセーリングを純粋に楽しめる様になれる。重要な事は乗り手の心が整理されて、スッキリして、解放されるという事。ヨットよりも、自分自身の気持ちが重要です。それがあってのヨットです。デイセーラーは最高の無駄、だからこそ最高に楽しめる。

ところで、前話のエッセンス33の価格が解りました。ベース価格で229,000ユーロと277,500ユーロ、同じサイズですが仕様が違う。これに様々なオプション設定があります。現在、さらにオールカーボン製の船体を2艇建造しているとか。最高の無駄に投資をするわけですが、その考え方は、もはやでかいヨットが良いという思考では無い。重要なのは、自分の感性だという事。

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