第20話 事情の違い

東京在住の方の話をお伺い致しますと、我々福岡がどんなに恵まれているかが良くわかりました。
気軽さをいつも言っていますが、東京ではマリーナまで2時間かかるとか、そんな事は珍しくも何と
も無い。そうすると、ちょっと行って、さーっと乗ってきて帰る。そんな気軽さにはなかなかなれない。
2時間、往復4時間、そうなると、よし、今度の週末は乗りに行くぞと構えないとなかなか行けない
そうです。それに比べると、福岡は海が非常に近い、2時間もかけるなら、長崎にも置ける。地方に
よって、マリン事情は違うものですね。

こういう状況なら、キャビンがほしいとかいうのも解る気がします。でも、それでも、あえて申し上げま
すが、気軽さを持つ事は大切だと思うのです。2時間もかかるなら、セーリングでも遠くへは行けない
それなら、近場で思いきりセーリングを楽しむ術を考えるべきです。小さなキャビンでも、小人数なら
ゆっくり過ごせます。快適さばかりを追って、それが重荷になるなら、不便を楽しみ、工夫を楽しみ、
日常とは別の世界を楽しむ事の方が、結果、充実してくると思うのです。そして、セーリングを楽しむ
事が、気軽に楽しむ事が一番です。

キャビンキャビンと言うなら、ヨットではなくて、海辺の快適なホテルに泊まった方がよっぽど快適に
過ごす事ができますし、その方が安上がりです。極端に言いますと、大きなヨットにしなくても、海辺
の快適なホテルに泊まって、翌朝セーリングに出ても良いのです。どちらの方が快適でしょうか。
係留費用、メインテナンス費用、クルーの確保、等々をトータルで考えれば、キャビンが小さくてと
思うなら、快適ホテルに泊まりましょう。その方が安くつく。もちろん、小さなキャビンに泊まるのも、
おつなもんです。

博多は恵まれています。マリーナが近いですから、ぶらっと来て、さーっと乗れます。でも、それでも
ヨットに来る人は少ないんですね。何故なんでしょうか?それで、乗らないから売りませんかと声をか
けると売らないといわれる。一体、何の為にヨットを持って、係留費用を払い続けておられるのか、不
思議としか言い様がありません。

それぞれに事情があります。マリーナが遠い人、近い人、仕事が忙しい人、クルーが居る人、居ない
人、どんな事情であれ、今、乗れるようにするのが大切です。大きかろうと、小さかろうと、今乗らなけ
れば、永遠に乗れない。いつか、いつかと思ううちに、乗れない理由はいつでもあります。そして、年齢
を重ね、体力も落ち、気がついたら乗れなくなった。そういう事にもなりかねない。いかなる事情だろうと
乗れない理由を探すより、どうしたら今の環境で乗れるかを考えてみるべきではないでしょうか。それで
どうしても今乗れないなら、ヨットは売ってしまえば良い。そして、いつか、また買えば良い。

人は未来を考えます。あまり未来ばかりを見ていますと、楽しめなくなるんですね。今できる事をするのが
良いと思います。未来はどうころぶか解りません。

次へ      目次へ