第34話 プロダクションボート色々

プロダクションボートと言っても、様々あります。ご存知の大量生産艇から、割りと小量生産の造船所
までありますので、それらを一言で言えばプロダクション艇という事になりますが、それぞれの個性や
何と言っても品質はかなり違います。

プロダクション艇の最高峰のひとつはナウター社のスワンと言っても良いでしょう。もう10年ぐらい前に
なりますが、年間30艇ぐらいの建造だそうです。本格外洋艇で、45フィート以上のサイズを建造して
います。今では、イタリアのフェラガモに買収されたとかで、品質は同じなのでしょうが、その後のデザ
インがちょっと変わってきたように思います。アメリカではセーバー社があります。スワンには少し及ば
ない所もありますが、それでもプロダクション艇ではトップクラスで、年間建造は70艇です。

プロダクション艇でも高級艇と言われるのは、やはり職人の技量の違いや建造工程にかなり手間をか
けており、その事が船体の剛性などに現れています。完成したら解りにくいかもしれませんが、年数が
経つにつれて、その差は歴然と出てきます。慣れてくると、新艇時でも、どこか違うと感じられるように
なります。もちろん、使用材料の品質も同じように違ってくる。でも、高いんですね、こういうのは。しかし
長い目で見ると、寿命が長い、船体に歪が来ない、それに設置されている機器類も壊れにくいので、
頻繁に買い換えるより良いかもしれません。それになにより、乗ると違いがわかります。

大量生産艇とこういう高級艇との間にも、いろんなヨットがある。材料の違いから、建造工程をどこまで
職人の手間をかけるかによって異なります。はっきり言って、職人の手間をかけるほど良いものができる。
10かけるか、5かけるか、1しかかけないかによって異なります。良い物はやはり違うのです。古くなれ
ばなる程違いが出てくる。それに時化た時とか、長距離走ると違いが解ります。ランク付けができると面白
いのですが。そうすると消費者もちゃんと理解して購入する事ができます。理解して買うなら、過度の要求
はしなくなります。

こういう一般的なプロダクション艇のさらに上に、セミカスタムと言われるヨットがあります。船体だけがモー
ルドを使ってFRP建造しますが、あとは全部オーナーのオーダーになります。デッキのアレンジから、リグ、
内装のレイアウト、使用機器から素材まで、オーナーが指定する事ができます。有名なところでは、アメリカ
のヒンクリー社やアルデンヨット社です。造船所にも行きましたが、それは丁寧な造り、最高の素材、素晴ら
しい超高級艇です。年間建造は10艇以下だそうです。さらに上を行くとなると、完全オーダーとなります。
まずはデザインから入り、造船所を選び、全てがオーダーです。もう究極ですね。1度だけ、セミカスタム艇
を販売した事がありますが、とにかく最高でした。性能から品質から、これまでのどんな艇より、どんな有名
ブランドの艇よりはるかに優れていました。オーナーから感謝の手紙を頂いたほどです。高価な艇は、それに
見合う品質、性能が無いと誰も見向きもしなくなる。ですから、彼らはよりよい艇の建造に情熱を傾けています
し、それが長くつきあうことによって良く感じられます。

何が言いたいかといいますと、日本ではある特定のヨットやボートに傾きがちで、本当に理解して選択している
とは思えない。プロダクション艇にもたくさんの種類があり、それぞれに品質が異なる。それが良いか悪いかと
言うことでは無く、それを理解したうえで選択すれば、日本にもいろんなヨットが入ってくるのではないかと思う
のです。そうするとみんながいろんなヨットに接触できますから、ヨットを理解しやすくなる。そうして初めて、自分
に合ったヨットに出会えると思うのです。いつも言っている事ですが、ヨットは何かの仕事に使うわけでは無いの
ですから、自分の個性、使い方、行動範囲、趣味、等々に充分反映させることが最も大切で、それが合えば、
合うほど満足のいくヨットライフが味わえる。大きいヨットや高級艇が必ずしも良いとは限らない。知る事が大切
です。その為にはもっともっとヨットを使わなければなりません。使って初めて解る。ヨットがわかり、自分がわかる。
解れば、もう他人と同じような選択をする必要が無いし、その選択に自信もわいてくる。だから個性的に楽しめる。
それが最も良いヨットです。

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