第43話 遊び心

数年前になりますか、家族で別荘に行った事があります。借りたわけですが、その別荘地には
普通の家にしか見えないような造りの家が並んでいた。確かに、見晴らしは良い。だけども、
別荘にまでそんなにまじめに建てなくてもよさそうなものという気がしました。せめて、ログハウス
にでもと思いましたが、また、数年後、別の所に行くと、そこはログハウスばかり。

どうせ別荘なんてたいした役には立たないのに、何も同じような家ばかり建てなくても思います。
役に立たないなら、機能性とか、そんなものより、もっと大胆に、自宅ではできないような家にして
遊んでしまえば良いと思うのです。

ヨットも同じです。どこ行っても、同じようなヨットばかり、機能だ便利だ、そんなことばかりに気を
使って、あげくのはては使わないんですから。多少不便でも、多少狭くても、思いきり自分の個性
を表現したら面白いのにと思います。どんなに便利でも、どうせ遊びにしか役立つところは無いの
ですから。失敗しないように、高価なものだから。と思いながら、結局、それが失敗じゃないか。
使っていないなら、失敗でしょう。

どんな形であれ、不便であれ、自分が心から良いね、面白いねと思うものが最も良いと思うのです。
何百万も何千万もするヨットが、使われずにゴロゴロしている。他人と同じヨットにしたら、無難だと
思っていた。それで、他人と同じように使わなくなってしまった。失敗しないように注意しながら、失敗
しているのです。他人も同じように失敗してしまったので、失敗だとは思わず、自分を納得させてしま
っている。皆で失敗すれば怖くないわけですね。でも、失敗は失敗です。だから、日本に入ってくる
ヨットはどれも同じです。考えてもみて下さい。これだえのヨットがあり、楽しんでいる人はわずか。
そして、さらに同じようなヨットを買うのです。そして失敗を重ね、係留したままのヨットが増えていく。
もう、こんな事はやめにしませんか?

みんな、頭を絞って、こういうヨットが良い、ああいうヨットが良いと考えて、購入します。皆さんの結果
がこうなのです。それなのに、何故その後を追うのか。失敗だとは思っていないからでしょうね。
数百万の買い物をして、使わないのが成功とは思えません。他人から見て、不便に見えても、快適
に見えなくても、変であろうが、なんだろうが、自分が最も楽しいやり方をするのが良い。役に立つか
どうかなんて、効率なんて、どうでも良い。自分が楽しいかどうかが全てですから。それで、しまった。
と思う事があったとしても、結果は同じです。もし、成功したら、その方がずっと楽しいのですから。
でも、しまったと思うほど、変なヨットは無いんですよ。

自分の遊び心をくすぐるようなヨットに出会えれば一番良い。無難というのは日常生活だけで充分だと
思うのです。最も、遊びたい部分に徹底的にこだわって、後の部分は犠牲にしても良い。オールマイ
ティーでは無いけども、ある部分では最高のヨットです。

車の世界は成熟しています。最も壊れないのは国産車。わかっちゃいるけど、外車の魅力ある車が
一杯あります。不便さも一杯ある。良く故障する。でも、魅力あるんですね。フェラーリ、ポルシェ、イタリ
アンレッドの美しさ、国産車には無い魅力満載です。おりこうさんなのは国産車、でも、外車の中には
効率を超えた魅力が一杯です。成熟した車社会、2台目の車にはできる我侭でしょう。でも、ヨットは
どんなに効率を考えたところで、買い物ひとつ乗っていけないんですよ。それなら、最初から、車の2台
目のような遊び心満載で、選んだ方が良い。その方が楽しいじゃないですか。家族のために快適な
ヨットをと思う方へ、ご苦労さん。でも、ヨットは所詮快適ではないんです。暑いし、寒いし、揺れるし、
傾くし、それでも、そんな不便以上の魅力が満載なら、多少の不便はなんのその、家族は快適だから
ヨットに来るのではない。日常には無い、魅力を求めてくる。面白いなら、不便なんて問題では無い。
エキサイティングなら、楽しいなら、他に事には目をつぶる。そういうものではないでしょうか。

子供に舵を持たせる嬉々としてやっている。キャビンの快適さなんて、すぐに飽きてしまうのです。キャビ
ンは住まうところ、住まないなら、快適セーリングをどうやって楽しむか、面白くするか、遊び心満載で
頭では無く、心でセーリングしてもらいたいですね。ゆったり、コクピットに座って、さわやかな風を受ける。
ああ、良いなヨットは。でも、こんな物は1時間もすればあきてくる。それより、海の変化の方が楽しいし、
キャビンでゆったり食事、そんなものより、ピザでもくわえながら、釣りでもした方が面白い。動いた方が
変化があった方が楽しいのです。家族みんなでカレーでも作ってコクピットで食べた方が楽しいのです。
セールを動かして、ヨットの変化を楽しんだ方が良い、あちこっちさわりまくって、動きを楽しんだ方が良い。
そして、くつろぐのは自宅で、エアコンの効いたところでゆっくりした方が良い。メインサロンの大きなテー
ブルを囲んで、皆で食事する。そんな事より、コクピットで、満天の星空の下で食べた方が良い。

ヨットは日常生活と同じではいけないのです。日常と同じ快適さを求めてヨットに乗るわけじゃない。むしろ、
日常とかけ離れた空間でなければならない。雨降ったらどうするんだ?いつもいつも雨ばかりじゃないでしょ
う。そういう事もある。それで良いじゃないですか。遊び心満点なら、みんなの顔に笑顔が見える。

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