第5話 上部構造

最近のヨットはフリーボードが高い。フリーボードとは水線からデッキまでの高さのこと。こうすると
キャビンが広くなるからだ。広いキャビンは快適なキャビンライフには都合が良い。でも、反面、
重心が高くなるし、風が強い時などは風圧面積も大きいので、流されやすい。おまけに、こういう
ヨットは排水量も軽いので、なおさら。最近の人がでかくなったと言っても、その為では無い。広い
方がゆったりしているし、天井も高い方が開放感があって良い。でも、これはヨットに住む人には
都合が良い、住まない人にとってもキャビンライフを楽しむ人には都合が良い、セーリングを犠牲
にしてでも必要以上に大きくするのには感心しない。キャビンが大きくなると排水量は重くなる。
それを避ける為にバラストを軽くする。そうするとよけい重心位置高くなる。それで、セール面積を
小さくすると、実に面白く無いヨットになってしまう。住むひとにはどうでも良いかもしれないが、
セーリングを楽しみたい私としては面白く無い。こういうヨットに大きなセールをはると、すぐにヒール
してしまうし、人より先に先にセールをリーフしていかなければ走れない。こんなのは好きにはなれ
ない。

コクピットは広い。実に都合の良い条件でセーリングするならそれも良い。或いは、マリーナで係留
したままコクピットで過ごすには持って来いである。でも、浅くて、広いコクピットは時化たときには
ちょっと困る。狭くても深いコクピットは安心でもある。要はセーリングを中心に作るか、住まう為に
造るかの違い。それぞれに良いデザインがあり、同じでは無いし、どちらが上でも下でもない。ただ、
セーリング主体に考えた場合は、これらは都合良く無い。まあ、そんなに時化た時は乗らないから
と言っても、帰りに時化られることは良くあるし、仮に時化られなくても、住むよりセーリングを優先し
たヨットは、セーリングも楽だし安全でもある。

それで、私の好みは、フリーボードの低いヨット、上部構造の低いヨットで、重心の低いヨットという事
になる。セーリング優先主義ですので。

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