第60話 最高を得る

不思議なもので、何かひとつ最高の喜びを得たら、これまで必要と思っていた事が
どうでもよくなる。そんな経験は無いでしょうか。

ある日のセーリングで、最高のフィーリングを得たとしよう。そうすると、今までこだ
わっていたキャビンの大きさや装備品など、あっても無くても困らないという事に気づ
く。そして、最高のセーリングができる事にだけ関心が向く。そうなると、ヨットはどん
どんシンプルになっていきます。でも、最低限が良いのでは無く、最低限でも構わな
いという風に感じられる。小さいサイズでも大きいサイズでも良い。エアコンがあっても
無くても良い。ただ、最も関心のあるセーリングに対してだけ、最高のフィーリングを
得たいと思う。照明もあっても無くても良い。そうなってきたら、より簡単に最高のセー
リングができるようになると思います。気持ちがセーリングに集中しているからです。
他の事に向いていないからです。100%の気持ちが、セーリングやヨットのサイズや
エアコンに向いていたら、それだけ集中していないことになります。無い事を奨励する
のでは無く、他の事はどちらでも構わないという態度です。

ヨットのどこかの部分で最高のフィーリングを得る事が楽しむ秘訣ではないでしょうか。
本当はセーリングで無くても良いのです。ヨットに泊まったら、何故かリラックスできて
気持ちがやすらぐ。というのなら、それでも良い。その最高のフィーリングを求めていけ
ば良い。どんな使い方をしても、全く構わないのです。その為には、ヨットの持つあらゆ
る側面を試してみなくてはいけません。眺めているだけでは解らないし、考えているだ
けでも解らない。泊まったり、食事を作ったり、セーリングしたり、島にわたってみたり、
釣りをしてみたり、夜間航行してみたり、読書したり、考えられる事を何度も繰り返す。
そのうち、どうでも良い事と楽しかった事が自然に解ってくる。その中で最高の物を追求
していけばいい。そう思います。

私個人的にはセーリングが最高ですし、ヨットでしか味わえない感覚だと思っています。
だからいつも、誰にでもセーリングを勧めます。ですから、徐々に、キャビンの広さには
こだわらなくなってきましたし、あれば良いなと思う事もありますが、無くても良い。
セーリングが最も面白いものですから、それが一番重要なのです。そこで、家族や友人
がたくさん乗れるようにとか、快適なキャビン生活の為とか、そんな事を考えると、セーリ
ングがしにくくなる。せっかくの親切心なのでしょうが、快適な物より、オーナーがとてつ
もなく楽しんでいる。そういう方が、招待された方も楽しいと思うのですが。広いエアコン
の効いたキャビンに入ると、すごいなと思う。でも、それ以上では無い。エアコンの効いた
広い空間はなんぼでもあるのです。それより、オーナーが最高に楽しんでおり、その最高
のフィーリングを分かち合えたら、ゲストにも同じように楽しんでもらいたいというオーナー
の心遣いが嬉しいものです。

自分が最高だと感じた感覚に集中して下さい。そして、それを他の人にも教えてください。
何故、セーリングが最高なのかと言いますと、変化するからです。常に変化しています。
キャビンは変化しないし、エアコンも変化しない、変化するものが面白い。毎日同じ内容
のテレビなら、飽きてくる。毎日違うから面白い。毎日、同じ食事ならあきてくる。毎日、違
っているからおいしく頂けます。変化しないものは退屈になる。ヨットで最大の変化を見せて
くれるのはセーリングですね。毎日違うし、注意を払えば、毎舜違う。これが最高だと思え
たら、今まで気になっていた事がどうでもよくなるんですね。

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