第66話 ハード&ソフト

物はハードですが、それを使うにはソフトが必要です。どちらか一方では使えない。
こんな物があれば良いなと思って、発明され、ハードができる。ハードが出来ると
ハードが中心になってしまうような気がします。ソフトが無くなるわけでは無いので
すが、ハードがリードして、それに人間が方向づけられるような気がします。それは
便利という名を借りて、人間を導く。どこかで、人間がついてこれなくなると、再び
ハードは見なおされる。

ヨットは今ハードがリードしてきているのではないかと思うのです。日本人の持つ
ヨットに対する遊びより、ハードが先行して、気持ちがついていっていない。意識的
にはついて行こうとしているものの、実情はついていっていないと思います。その
証拠に使われていない。

先日ヨーロッパの造船所から1ヶ月間、会社を夏休みにすると連絡がありました。
丸々一ヶ月、会社ごとクローズしてしまうヨーロッパ。また、アメリカの造船所からは
2週間の休みと連絡がありました。彼らはこんな生活習慣を持っている。日本では
考えられない事です。会社全体の長期休暇、加えて、個人的にも休暇を取るでしょ
う。そうなると、まとめて休める期間は長い。そんな時、ヨットでゆったり過ごすので
す。欧米でのヨットの歴史は長い。ですから、ハードがリードして、見なおされ、そし
て今、欧米での生活習慣に合ったヨットとなってきているのでしょう。そういう匂い
がします。

このまま日本が見習って、このヨットを使うとなると、なかなか合わないんですね。
夢としては、想像できます。ゆったりと、あっちこっちへ行きたい。そう思うオーナー
は多いと思います。しかしながら、実情がこれに合わない。それで週末だけのヨット
となり、その週末さえ犠牲になる事は多い。長期にゆったりクルージングに行くには
良いヨットも、デイセーリングを考えるとやや重く感じてしまうことはないでしょうか?

それで仕事を引退したらと思うものの、これまでの長い期間、ヨットに接触する機会
も少なかった人達が、引退したからといって急にロングへ行けるものでは無い。これ
を可能にするには、常日頃、ヨットで遊んできた気持ちの慣れが必要ではないかと
思うのです。デイセーリングかもしれないが、しょっちゅう乗って親しんできた。そして
引退して、やっとロングにも行ける。これなら解る気がします。

だからこそ、現役の時はデイセーリングをもっともっと親しみましょうと言います。夢を
現実にするのは、ヨットそのものや技量より、どれだけ自分の気持ちがヨットに近づ
いているかではないかと思うのです。いつも接していれば、ヨットが特別では無くなっ
てくるでしょうから、気持ちがぐんと近づきます。例え、ヨットを出さなくても、接している
だけでも違うと思います。ですから、今はセーリングし易い、気軽なヨットで、しょっちゅ
う乗って、ヨットを自分の物にして頂きたい。少ない休みの中で、気軽に出せる状況を
作っておかなければ、気軽には出れない。気軽に思えるヨットを見つけてほしいもの
です。

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