第75話 遊びの後進国

遊びに関しては日本は後進国ですね。遊びと仕事は仕事の方が大切だと思っています。
フランス人だったと思いますが、ある日本人が窓際族になった。やがて、この日本人は辞
職してしまいます。このフランス人の目からすると、自分が窓際族になったら、これはラッ
キーと思うそうです。仕事しなくて、給料がもらえる。こんな天国のような事は無いと思う
そうです。

後進国が悪いわけではありません。遊びより仕事を優先する国民であり、そのおかげで
日本はここまで来れた。価値観の違いというだけです。でも、多少なりとも余裕がでてきた
おかげで、日本にも遊びという感覚が定着してきました。でも、考えても見てください。経済
的余裕が出てきたから遊べるというものでは無いのです。ラテン系の人達、彼らは遊ぶ為
に働いています。

日本人には日本人の遊び方がある。欧米人とは所詮異なると思うのです。異なるからとい
って同じようにまねる必要は無い。スタイルが違う、価値観が違うのですから、自分流で遊
ぶのが良い。欧米人は時間があるせいか、何もしなくても遊べる。テレビで見た浜辺で読書
している光景など、ちょっとびっくりした事があります。ピクニックに行って、軽い食事をしなが
ら、ただ延々としゃべっている。日光浴と称して、公園などで寝そべっている。マリーナに来て
コクピットでわずかな酒で延々と過ごし、キャビンに泊まる。何か特別な事をしなくても、楽し
める民族であるようです。

日本人は目標を持って進む傾向にある。遊ぶ?何をして遊ぶ?どこに行く?マリーナに来て
ただコクピットで過ごすのは苦手なようです。だから何か目的が無いとマリーナには来れない。
向こうの島に渡るという目的が無いと来れない。メインテナンスをするという目標が無いと来れ
ない。何もしないのは退屈になる。あの向こうの島には毎週は行けないので、たまにしか来ない。
でも、何度か行くと、同じ所では飽きてくるので、今度は違う場所に行きたくなる。そうするともっと
来れない。それで、目標を違うところに持ってはいかがでしょうか。それはセーリングそのもの
です。ただ、エンジンかけて遠くへ行くだけがヨットじゃ無い。セーリング、どんなセーリングを
するか、緊張して、セーリングに集中して、自分のヨットがどんな走りをするか、させる事ができる
か、外を見るのでは無く、自分の感覚を楽しむ。良い走りを楽しむ。快走を楽しむ。シートを出し
たり引いたりする事が、舵を切る事がどんな走りを見せるか、感覚を楽しむ。

アテネオリンピックで470で銅メダルを取りました。日本はヨットの歴史が浅い。そういう中で銅
メダルというのはすごい事だと思います。でも、これから多くの方々がセーリングを楽しむように
なると、本当は日本人はもっとすごい成績と取れるようになるのではないかと思うのです。日本
人は目標達成能力はすごい物を持っていると思います。ただ、遊びに関しては欧米人のような
遊び方は苦手です。日本人の遊び方は、ただぼ〜っと遊ぶのでは無く、突き進む遊び方では
ないでしょうか。一旦、目標が設定されると、すごい能力を発揮します。そして、それに生きがい
さえ感じる事ができるのです。仕事でもです。

レースでも無く、セーリングそのものを追求する姿勢は欧米の遊びとは違うかもしれません。セー
リングを追求するのはレースの世界と決め付ける必要は無い。遊びでセーリングを追求しても
良いではないですか、日本人にはその方が楽しめる。あの島へ行くという目標があれば、日本人
は行ける。でも、日常にはなり得ないので、乗らなくなる。ならば、セーリングそのものを追及して
楽しむという目標設定は日常にヨットを乗るには最高の目標です。

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