第９１話 外洋
| 沿岸と違って、外洋はいざという時に逃げ込める港は数百マイル離れている。こんな時は いかなる大時化と言えども、ヨットと供に耐えぬかねばなりません。従って、命を預けるヨ ットですから、信頼のおけるヨットでなければならない。 頑丈である事、重心が低い事、直進性が良い事、積みこむ荷物も多くなりますので、排水 量もある程度重めが良い、燃料タンクや清水タンクも大きいのが必要でしょうし、とにかく、 デイセーラーやコースタルとは違ってきます。 かつては、外洋艇にはロングキールというのが相場でしたが、今では技術の発展などもあ り、ロングキールの方が少なくなりました。ロングキールは直進性の良いのがメリットで、 とにかく超ロングですから、舵を離してもある程度真っ直ぐ走ってくれるほうが楽なのです。 細かい舵取りは必要なくなるからです。最近の良くデザインされたフィンキールは直進性 も良いし、舵効きも良い。とにかくロングを走るには次元の違う性能が要求されます。 セールで言えば、ストームジブなどを展開できるようにカッターリグ、スターンは絞り、深い コクピット、前後位置がなるべく軽くピッチングしにくい物、重心が低い物、まだまだたくさん あります。ロングを走るというのは、通常とは全く次元の異なるセーリングですから、よくよく 吟味が必要です。 当社ではアメリカのセーバー、イタリアのコマー社に外洋艇モデルがあります。ただ、最近 の外洋艇は昔と違って、超ヘビーな印象を与えず、デイセーリングでも楽にこなせるように なってきました。帆走性能も高く、クルーさえいればオールラウンドに楽しめるヨットです。 但し、このままで外洋に行けるわけではありません。実際には、これにプラスウィンドベーン であるとか、ソラーバッテリーチャージャーとか、を追加していきますので、一般に言われる 外洋艇はそのベースとなる事ができるという事です。 外洋艇では無い艇で外洋を走ると、まず船体に歪が来る。バルクヘッドが浮いて来たり、 窓やデッキとハルの繋ぎ目から海水が漏れたり、とにかく、耐えるだけの頑丈さは無いで しょう。絶対行けないわけではありませんが、トラブルだらけかもしれません。 外洋艇の良いところは、頑丈である為、長持ちするという事です。それに船体のねじれなどに 強いですから、それから来るトラブルも少ない。こういうヨットは価格も高くならざるを得ない。 従って、船体以外にもグレードは高いものです。特に、見えない部位でのグレードが高い。 取り付け方がしっかりしているとか、配線がきちんとしているとか、部品のグレードが高いとか そういう事でトラブルも軽減できるのです。 今の外洋艇は設計にもよりますが、オールラウンドプレーヤーとも言えます。ただ、サイズ的 に小型は建造しなくなりました。セーバー社では３８フィート以上、スワンは４５フィート以上 価格も高いですが、何十年でも持ちますし、高寿命ですから、予算があって、一人ヨットを知る クルーが居るなら、絶対お奨めですね。 スワン５３を二人で乗りまわしていた時があります。デイセーリングでも、最高の走りを堪能で きましたし、ロングに出てもらくらくでした。疲れないんですね、しっかりしたヨットは。さすがです。 セーバーでも同じです。大時化の中でも、恐怖感をあまり感じなくて済むんです。信頼できるヨット 外洋艇は信頼できなければならない。他にもあります。アメリカのアルデンヨット、これはカスタム による究極のヨット、はっきり言ってスワンより高いです。 |