第93話 ヨットを吟味する
デイセーリングを強調してきましたが、ヨットを見てみましょう。デイセーリングは基本的な 乗り方ですから、デイセーリングをコンセプトに持つヨットは当然そういう仕様が吟味されて います。でも、コースタル用であっても、外洋艇であっても、デイセーリングは可能です。 キャビンの大きなコースタルは一人ではだしにくかもしれません。腰も強く無いかもしれま せん。それなら、クルーを何とか確保する事に努めるか、シングルでも出せる工夫が必要 です。外洋艇でも同じ。今のデザインならデイセーリングとしても、セーリングを堪能できる ただ、大きさによってはクルーが必要です。自分ともう一人でもヨットを知るクルーがいれば たいていのヨットを楽しむ事ができます。 以前、何度かふれましたが、私は50フィートオーバーのクルーをしていました。乗るのは、 大抵、オーナーと私の二人。この二人で、2,3時間のセーリングをしょっちゅうしていました。 知らない方に言いますと、そんなでかいヨットを二人でと言いますと驚かれますが、実際、 やってみると十分楽しむ事ができます。一人が舵を握り、もうひとりがセールを扱う。レース のような素早いさばきは無いかもしれませんが、それでも十分遊べます。2,3時間ですから 特別な物は何も用意しません。少しの飲み物と弁当を抱えて、出す。セールを出して、クロー ズ、アビーム、ランニング、セールトリミングを繰り返し、そして、全てが整えば、しびれる様な セーリングを何度も体験しました。でかいヨットを何度もタックを繰り返し、慣れて、スムースに なってくればそれだけでも面白かった。クロースの走りで、時折来るブローに適切にシートを 出して、同じヒール角度を保ちながら抜ける。もちろん、雷雨にもあったし、強風で冷や冷や させられる事もあった。でも、最高にエキサイティングでした。 ここで、二つのことを申し上げます。このダブルハンドでのセーリング中、殆どリーフする事が なかったのです。風が強くなれば、セールを調整しながら、いつもフルセールで走っていまし た。これはこのヨットが重心が低く、バラスト比が高かったせいで、その風に対する許容範囲 が大きかったからです。それが無いと、ちょっと風が強くなると、すぐにリーフしなければなら なくなります。そうすると、せっかくの走りを放棄しなければならなくなる。つまり、ヨットはでき るだけ、重心が低い方が許容範囲が大きい、それだけ楽しめるという事です。これは船体自体 の重心が低い事、そしてバラストが大きい事、もちろん、セールプランも影響します もうひとつは、気軽な気持ちを持つ事です。この場合、大きいからと言って、我々の気持ちは 気軽なものでした。ただ、大きいから出航準備には少し手間がかかったのですが、それをでき るだけ手間のかからないようにする事と、面倒くさがらずに進んでやるように心がける事です。 幸いオーナーはそういう方でしたので、実に気軽に、デイセーリングを楽しんできたものです。 エキサイティングな走りをすると、2,3時間走ると、結構疲れてくる。あるいは、午前中試した 事を午後にもう一度出して、走ってくるなど。そういう乗り方でした。時には、ゲストも来られる。 そういう時はゆったりムードで走ります。使い分けをしています。たまに、ちょっと遠くへ行きます と、やはりエンジンか機帆走、それもそう割りきっています。デイセーリングは帆走を楽しむ、 遠くへ行く時とは目的が違います。それを使い分けてきました。そして、圧倒的に多いのは デイセーリングなのです。 ヨットがとても面白くなりますと、メインテナンスもできるだけ自分達でやる。このサイズでも船底 塗装さえも自分達でやりました。いろんな事も少なくとも業者にやらせる事があっても、自分達 もかかわってきました。何故なら、ヨットが面白いので、どうなっているのか知りたくなるからです どこに何があって、どうなっているのか、余程の専門知識が必要な場合以外は、大抵、何が どうなっているのか解ります。キャビンの床板をあけたり、バルブ、エンジン周り、そういうところ を覗くのは頻繁でしたし、水が溜まると何故かと考えるのも普通でした。これらは、しなければ ならないからでは無く、ヨットが面白くなると、自然にそうしたくなるものです。 皆さんに、こういうヨットの運営の仕方を是非お奨めしたい。気軽なデイセーリングを日常として、 エキサイティングなセーリングを楽しむ。たまにゲストがきたら、そのように、たまに、遠くへ行った らそのように、そこで、自分のヨットをそういう目で見て、デイセーリングを楽しむにはどうしたらい いか、クルーはいるか、シングルならどういう風にするか、そういう事を考えてみてはいかがでしょ うか。とにかく、全ての方々にデイセーリングとエキサイティングなしびれるようなセーリングを体験 して頂きたい。全てはここから始まると思います。 |