第七十七話 センサー


      

セーリングは知識と技術、そして感性、最終的には感性だと思いますが、知識と技術と共に洗練されていくと思います。五感で外部情報を得たら、何かを感じます。そして頭脳が処理をする。知識や技術は理論的、知的面白さですが、感性は理屈を超えた面白さです。

セーリング中に滑らかさを感じたり、ふっと加速したり、ヒールの動き方だったり、ちょっとした操作でスピードが上がったり、風や波の影響の変化、自分の操作の変化、そういう事がより繊細に解ったら、面白いと思いません?計器で解る事もありますが、感覚的にいろいろ感じられたら、面白いと思いませんか?同じヨットに乗りながらも、感じる事はそれぞれ全然違います。どうせ乗るなら、いろんな事が感知出来た方が楽しいんです。

ヨットにはスピードセンサー、風向風速計やデプスのセンサーを設置します。しかし、最も重要なセンサーは自分の感覚センサーだと思います。それが鋭いか鈍いかでセーリングの楽しさ、面白さが違ってくるからです。だから楽しいか、面白いかは自分のセンサー次第、センサー感度に比例する。

だったら、そのセンサーを洗練していけば良い話です。意識をセーリングに向けて集中力を持って走らせる。いつもそうしていると、センサー感度が徐々に上がってきますし、やがて、それが普通になり、特に意識しなくても、ヨットに乗ればいつも自然に感度が高い状態になれる。ヨットに面白さを求めるなら、自分のセンサーも相応にしておかないといけません。それがセーリングを楽しむという事ではないかと思います。

そういうセンサー感度を手に入れたら、一生失う事は無い。それは頭で覚えたものでは無く、体感的に獲得した身体の記憶だから。何も体感でスピード何ノットと解るとか言うわけではありません。大きな変化は誰でも解りますが、それでも違いはあります。小さな変化は解る人にしか解らない。大きかろうが、小さかろうが、解る人の方が面白さのレベルが違います。これによって上手くなるというのもありますが、今は上手く無くても、その変化に気付ける事が重要であり、それがあるからこそ上手くもなれる。それが、楽しさになり、面白さになる。

センサーは自分自身の性能です。性能は知識や腕もありますが、それ以上にいろんな変化を感知できる能力に寄る処が大きい。変化が解るからこそ、面白さであり、次の操作も生まれてきます。その全体を遊ぶ事がセーリングの面白さになるのではないかと思うのです。それに、ゆったり走る時でさえ、フィーリングは違ってくると思います。また、自分が楽しんで解るからこそ、そういう感度の高いセンサーを持つからこそ、ピクニックなんかでもゲストを楽しませる方法が解って来るのではないでしょうか?吹くも良し、吹かない時も良し。まずは、セーリングに意識を置いて、いろんな風のセーリングを楽しむ事だと思います。集中力が大事ですが、でも、身体はリラックスして、意識だけが静かにセーリングに向かう。ですから、セーリングは頭脳も使い、同時に感覚にも注意を払います。それだけで、感度は自然に洗練されていくと思います。セーリングの感度は、何もレースで勝つ為ではありません。自分が楽しむ為です。

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