第二十四話 小規模造船所の良さ


      

 
写真は現在建造中の28フィートのクルージング艇です。日本では全く知られていない造船所ですが、世界にはまだまだたくさんの知られざる造船所があります。大量生産艇は既に日本に知られていますが、実際は、こういう知られざる小規模造船所の方が圧倒的に多いです。

本艇は28フィートのクルージング艇、最近はこのサイズの艇はが少なくなりましたが、気軽にシングルも考えると程良いサイズでは無いでしょうか?キャビンも充分広いですから、かつての30フィート感覚ぐらいあるのではないかと思います。

小規模造船所の良さは、造りにあります。職人がちゃんと手間をかけてます。それが無いなら、小規模造船所は生き残れません。例えば、写真に見える床下の補強格子は船底にきちんと積層されていますし、ハルに接触するバルクヘッドやその他も全部積層されています。これらは船体剛性を高める事になりますが、反面手間がかかる。できるだけ多くモールド成型してパテ接着というヨットも少なくありませんが、小規模造船所はその手間を惜しまない。それが小規模造船所の価値でもあります。

また、キャビンの左右の椅子がカーブしていますが、標準はストレートです。ですが、オーナーのご希望によってラウンドしたソファーにしてもらっています。小規模造船所はこういうオーナーの要望を聞いてくれる。これもモールド成型では無いからできる事です。量産艇ではあり得ないです。この写真を見ても、モールド成型による部分がハルとデッキしか無い事が解ります。もちろん、モールドを使った建造の方が造船所にとっては簡単ではありますが。だから、量産ができるとも言えます。



コクピットにはチークが張ってあります。ただ、チークを縦に並べただけでは無く、ちゃんと周辺をトリミングしてあります。これは見た目だけの良さでは無く、縦方向のエンドがトリミングによって囲まれていますから、そこが傷みにくい。もちろん、ビスを使わずに接着されています。こういうのさえ造る側からすれば手間のかかる事なのですが、それをやるのが小規模造船所の良さです。



スターンは今時ですから、例外にもれずワイドです。このトランサムには、下の写真が設置され開閉式になっています。トランサムをクローズに出来ますし、開けばスウィミングステップ、そこにはラダーもあります。



下の写真の様な感じになります。


意外かもしれませんが、クルージング艇もやってます。気軽に旅を楽しむに、このサイズは良いんじゃないでしょうか?この艇はもうすぐ完成です。日本にやってきましたら、またご報告致します。我々が見かけるのは量産艇ばかりですが、でも、世界にはたくさんの小規模造船所があり、その良さを知って頂きたいと思います。

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