第三十二話 ニューアルコナ435


      

無言で前をみつめながら舵を握る。良いですね。やっぱりセーリングは良い。彼女が何を考え、何を感じているかは解りませんが、でも、誰もが身に覚えがあるんじゃ無いでしょうか?滑らかにスーっと走る様を感じながら、心地良い緊張感を楽しんでいるんじゃ無いでしょうか?セーリングにはこういう時があります。これが実に気持ちが良い。

ところで、彼女が走らせているのはアルコナヨット社のニューモデル、アルコナ435です。この平べったい感じは、この間見たクラブスワンにも同じ様な印象を持ちました。但し、アルコナの一貫したコンセプトは高い帆走性能と外洋性を含めたクルージング性能の両立です。だから、内装はスワンより造り込んであります。いわゆるハイパフォーマンスクルーザー、又はレーサークルーザーと言われるジャンルです。もちろん、このジャンルにもいろいろあります。その違いはセーリング性能とクルージング性能の各レベルの高さと相反するふたつの要素の割合いの違いでしょう。



SADRは25.8で、実は、この数値は同じ北欧のXp44と殆ど変わりません。もちろん、最新技術で建造されていますから、これ以上の数値を得るには、船体をカーボンで造るとか、内装をシンプルにするとか、これらによって排水量を軽減し、スピードを高める事も可能です。しかし、それはアルコナヨット社の本意ではありません。あくまでセーリング性能+外洋クルージング性能というのが彼らの目指す処です。速いだけなら難しく無いと彼らは言います。



今日、ヨットの減少に対してパワーボートへの移行も見られますが、しかし、セーリングの魅力はやはり心地良い緊張感と共に感じる何とも言えない繊細なフィーリングにあると思います。セーリング好きには堪らない。ヨットやボートもそうですが、みんなで楽しんだり、旅したり、いろんな用途に使えます。しかし、緊張感のある繊細なフィーリングのセーリングは、やはりヨットならではの味わいですね。

このヨットは8月にスウエーデンのボートショーでデビューし、その際、価格が発表されますので、出ましたら掲載したいと思います。

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