第七十三話 フライミートゥーザムーン


      

某会社の社長が月に行くとか。良いですね。何が良いって、別に月に行きたいわけじゃないけど、自分で稼いだお金を、それが何であれ自分の人生の経験に置き換える。この点において素晴らしい事だと思います。お金が素晴らしいのは、それでいろんな経験と交換する事が出来るからだと思います。交換しないならいくらあってもたいした意味は無い。

世の中にはお金があるからこそ経験できるという事がたくさんあります。と言う事はお金がある人はそのお金をより多くの経験に置き換える可能性を持った事になります。お金持ちになるとはそういう事では無かろうか?生きる為だけならお金持ちになる必要は無いが、それ以上の経験をしたいからお金があった方が良い。人生とは経験とその味わいだと思います。

それで例えば、ヨットを手に入れる事ができる。ところが問題はここからで、所有だけで留まるか、誰かを雇って操船させるか、或いは自分で操船できるようになるか?それぞれに異なる経験を味わう事になります。選択は自由ですが、この中でも自分で操船できるようになって、様々な経験を深くしていくというのは、お金があるからってできるわけじゃない。

競走馬のオーナーになったらオーナーとしての味わいはあるが、ジョッキーとしての味わいは無い。最新のレーシングヨットを買って、プロを雇って走らせる。でも、自分が乗るわけじゃない。これもオーナーとしての味わいです。人生にはこういう楽しみ方もあります。いかにもリッチ感があります。一方、自分で馬に乗って走ってみる。自分でヨットを操作して走ってみる。これはまた別の経験と味わいです。結局、どういう経験を取るかは価値観次第、それが経験を生み出し自分の人生を創る事になる。

月に行くなんて素晴らしい。ロケット持つより素晴らしい。ヨットを持つ事は素晴らしい。でも、それを自由自在に操船するという経験に発展できたらもっと素晴らしい。宇宙と近所ではフィールドの広さは違うけれど、経験と味わいにおいて、どちらも素晴らしい事に違いは無いと思います。ただ、私なら月よりセーリングを選ぶ。これは単なる価値観の違いです。

今度、誰か出てきて、これからセーリングを徹底的に極めます宣言してくれないかな。世間的な評価やアピール度は低いだろうが、その味わいは月旅行には負けないかもしれません。何しろ、自分で自分を高めて、自分で全部やらないといけないんですから。お金の問題では無くなる。

お金で買える物ならたいした事は無い。お金さえあれば誰でもできる。でもそのお金が無いとしたら、お金を稼ぐ力が素晴らしいという事になる。そして、そのお金で買ったヨットはたいした事は無い。でも、そのヨットを経験に替えていく事は素晴らしい。結局、素晴らしいのはロケットでも無く、ヨットでも無く、経験であり、味わいだと思います。


写真のヨット
見るからに速そうだし、クオリティーも高そうだ。こんなヨットを自由自在に走らせられるとしたら・・・・・・・

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