第八十七話 ちょっと気になるヨット


      

このヨットは以前にもご紹介した事があります。しかしながらその時はあいにく設立者が病気で亡くなられたタイミングで、その後の動きが良くつかめなかった事もあり、時期を待つ事にしていました。それがやっと方向性が決まり、連絡をもらった次第です。このヨットは当時からずっと気になるヨットでしたので、状況を確認しつつ話を進めております。

デザイナーは有名なディクストラ、彼はスーパーヨットのデザインでも有名ですし、オランダのイーグルヨットも彼のデザインです。バウは海面に垂直に下り、スターンは大きなオーバーハングを持ついわゆるモダン/クラシック、高い帆走性能とシングルハンド性、それにクラシック感は時代に左右されないというそれぞれの特徴を上手くブレンドさせている。このデザインには優雅で暖かさを感じます。

超モダンデザインでセーリングマシン的なデザインはいかにもスポーツ感が溢れて魅力がありますが、一方、こういう暖かい感じに落ち着きを感じます。このヨットはデイセーラーとしてのセーリング性能はもちろんですが、この内外装の暖かいフィーリングが、それだけでは無くちょっとした旅や泊り等、そういう誘いかけられる様な感じがします。それに品が良い。

セール面積/排水量比を計算してみますと25.5ありますから、これは充分にセーリングを楽しめる。レーサー/クルーザー群の中から上の方辺りです。微軽風でもスーッと走るでしょう。デイセーラーとしての特徴は軽量化によって小さなセールでもハイパフォーマンスを実現できる処にあります。だからシングルでも扱い易い。工法はビニルエステルのバキュームインフュージョンです。排水量:2,700kg、バラスト重量:1,050kg、セール面積:46.6uです。

メインシートとトラベラーのコントロールは後方からリードされ、コクピット両サイド中央の四角いボックスから出ています。舵操作とシート操作のコンビネーションが味わえます。バックステーはコクピット後方にリードされており、舵はラット仕様もありますが、このヨットにはティラーの方が似合うかな?お好みですが。標準ではジブはセルフタッキングではありませんが、それも変更可能、標準ではジブシートは左右のコクピット横のウィンチでも前方のウィンチでもアレンジ次第です。また、ジブファーラーのドラムはデッキ下埋め込みで、前方ピークから少し後方に位置していますから、このままバウスプリット無しでバウピークにジェネカーやコードゼロなんかを展開できます。

エンジンはヤンマーの3YM20セールドライブにフォールディングプロペラ辺りで良いかな。排水量軽いですし。エレクトリックも可能だそうですが、日本ではまだ使いにくいかな?充電の問題もあります。日本仕様をどうするか?そんな事を考えています。



キャビンはデイセーラーのそれですが、何と無く船内にも暖かさ感じます。これはクルージング艇の広さ程はありませんが落ち着ける暖かさを感じます。左舷にはギャレーがあり、右舷側にはカウンター下に隠れてマリントイレが設置してあります。ここはカーテンでプライバシーをという事になり個室ではありませんが、滅多に使わないトイレ、緊急用とすれば十分だし、それにもし使う時はキャビン入口を閉じてしまえば完全個室になる、これで良いと思います。豪華さを演出する様な煌びやかさというものでは無く、長い間付き合っていくにシンプルでありながら落ち着いた雰囲気と品の良さを感じていますが皆さんは如何でしょうか?

このヨットのキャビンは普段はデイセーリングだけれど、たま〜にちょっとクルージングして泊まったり。キャビンにコクピット兼用のテーブルでも置けばそういう遊び方にも良い。そういう誘いを感じさせるものがある。セーリング性能として充分スポーティーだし、クラシックなクルージング艇の様な暖か味もあって、それでずっと気になっているデイセーラーです。今後、事が進みましたら、あらためて取り上げたいと思います。



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