第十八話 主流派から飛び出る


      

何事も同じ流れがずっと続く事は無く、どこかで転換点がやってきて、そこから徐々に流れが変わって行く。それは多分、大手がもたらすのでは無く、小規模な処から始まっていくのではないかと思います。そして、それが既に始まっています。

ポーランドから今度やってくる32フィートのクルージング艇ですが、幅は約3m、恐らく今の主流派クルージング艇に比べたら30〜40cmは幅が狭い。2ラット全盛時代に、違うヨットが出て来た。もちろん、メインシートはコクピットにある。こんなヨットが小規模造船所からちらほら、という事はそれなりの需要があるという事です。幅が狭いたって、上の写真を見れば不足は無いと思うのですが。

また、デイセーラーの支持層も少なからず世界中に存在します。どちらもメジャーではもちん無いし、主流派のでっかいボリュームヨットに取って代わるなんて事も無いでしょう。でも、今後、これらの流れが明確に主流派から分かれて、ある一定の流れを形成するのではないかと思います。

ヨットに対する考え方が、実際に乗って、走らせて、旅をして楽しむ派と、他方はキャビン中心とする派です。ステータスを考えれば、でっかい方があるのかもしれませんが、一方では、自分の個性、こだわりやセーリング技術にステータスを見る人達も欧米には居ます。デイセーラーがジェントルマンズボート言われる所以もここにあると思います。

流れが変わるというより、新しい流れと言いますか、今はまだ支流ができたというぐらいかもしれませんが、どっちが良いかでは無く、どっちを支持するかになります。主流派の楽しみ方って、だいたい最高というより、そこそこ平均的である事が多く、最高は常に支流派にあると思ってます。何故なら、支流派は自分の楽しみ方が解っているからです。

先日、テレビを見てましたら、欧米では法律で数週間の休暇を取る事が決められているそうです。あるフランス人だったか、最初の一週間は休暇への助走で、2週間目ぐらいから本格的休みを満喫するそうです。休暇は4週間だとか。家族でのバカンスを考えたら、それゃあでっかいキャビンが重宝されるのも解ります。

でも、その中にあって、ヨットだけに縛られるのは嫌だという人達も出て来ています。毎年、ヨットばかりでは無く、違うバカンスも楽しみたい。そうなるとヨットを選択する視点が変わってきますね。そういう流れもあるのです。それが支流派としての新しい流れを支持しているのではなかろうかと思います。

数週間の休暇を毎年取る欧米と、休みはあっても飛び飛びの休み、今年のゴールデンウィークなんか10日間あったわけですが、これを有意義に過ごせた方はどのくらい居るだろうか?こういう国民性の違い、習慣の違い、文化の違いは、当然ながらヨットの在り方も違って当然なのではないかと思います。だから、我々も欧米人の様にでは上手く行きませんから、良い悪いの話では無く、違うから自分自身に合うやり方をしないと、楽しめるわけが無い。だから、日本人のやり方が必要で、これはまさしく支流派こそが日本人に合うのでは無かろうか?

例えば、どんなにでかいキャビンでも丸々一週間、ヨットを動かさずにキャビンで過ごすなんて事ができる日本人はそうは居無いだろうと思います。退屈でしょうがない。だったら、近場でセーリングを楽しんだり、クルージングしたりの方が良い。そういう気軽さを手に入れる事は重要です。だから選択するヨットも違ってきて良いのではないかと思う次第です。

昨今はヨットが減少してきていますが、考えてみれば当たり前で、マリーナに行っても人は少ないし、動いていない。こんな現状でヨットが増えるはずが無い。また、若者達がヨットに来なくなったという事、世代交代が上手く行っていないとも言われますが、それも当たり前で、動いていないヨットが多い中、どこに魅力を感じれるだろうか?ですから、まず、今在るヨットが動くようになる事が先決ではないかと思います。この点、欧米人は合理的ですから、自分が思ったらすぐに切り替えられる。日本人はそれがなかなか難しい。
周りの人達の動きを見ながら、周りの人達も他の動きを見ながらという事が多く、なかなか簡単ではありませんが、でも、今はそういう転換期にあるのではないかと思います。

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