第三十二話 抜け出せるのは誰か?


      

欧米がヨットやボートを別荘化している話は以前にも書きました。マリーナは本来のマリーナ業からリゾート地としてのサービスを模索して居ます。まあ、これはこれで、リゾート地に別荘を建てるより良いのかもしれない。少なくとも移動ができ、そこに飽きたら、別の場所へ移せる。ヨットやボートの考え方のひとつはこういう別荘化であり、この割合が非常に大きい様です。

さて、日本でも同じ様な考え方を持つ人達も居ます。瀬戸内、九州、沖縄なんかに置く関東、関西の方々もおられます。しかし、そもそも別荘という文化が日本に広く浸透しているかというと甚だ疑問に思います。何故なら、本当の別荘地は閑散としている処が多い。一時流行りましたが、数年後にはメインテナンスもされずに草ぼうぼうなんてのも珍しくない。別荘は管理が重要ですが、それがなかなか上手くなされていない。同じ様に、ヨットやボートもメインテナンスが重要です。久しぶりにヨットに行ったら、汚れてたり、トラブルだらけじゃあ楽しく無いですから。それならホテルの方がましかもしれない。

ヨットやボートの使い方のひとつが別荘ですが、でも、本来の特性を活かした使い方というのが、実はボチボチ出てきています。それは実際に走って海を楽しむという事です。ならば、それにはどんなヨットが良いんだろうという事も含み、もはやキャビン中心では無くなってきています。この考え方は、別荘ならば、休み毎に別荘に行き、そこが余程気に入ったリゾート地なら良いんでしょうが、それでも毎回です。これに対して、もっとバリエーションを求めるという動きがあります。

去年の夏休みと今年も同じでは気分が盛り上がらない。家族は海ばかりか山にも行きたがるし、別のリゾート地、素晴らしい景観地、その他、いろいろあるわけで、別荘に縛られるのは嫌だという話です。かと言って、ヨットをやめたいわけじゃない。

そんな処から、ヨットの本来の特性であるセーリングをもっと深く味わおうという動きです。そうなるとヨットは別荘では無くなり、もっと気軽な乗り物としての機能が求められてきます。ヨットはヨットとして気軽に遊び、別荘、旅行、そういうレジャーとは切り離す。もちろん、ヨットであるから旅もありますが、どちらかと言うと、近場の旅が中心になる。ヨットの旅はまた他とは異なる感覚ですから、それも楽しみます。しかし、長期の旅をする本格派の旅とは違います。

そうなるとどんなヨットが良いのか?旅でもキャビンはそうそうでかい必要は無い。むしろ、半キャンピングみたいな感じも面白いかもしれない。短期ですから。そして、セーリング中心だったら、キャビンよりもセーリング性能が良い方が面白い。こうやって、セーリングを楽しみ、旅を楽しむ。それ以外は車で飛行機で、或いは旅客船で楽々と旅を楽しむ。

こうなると、旅もセーリングも、今迄以上に、思いっきり楽しんで、そのヨット本来が持つ味わいを深く楽しみたくなり、これは逆に良い効果をもたらす事になります。いち早くここに気付いた人は、考え方を改めて、これまでのマンネリ化したヨットライフから抜け出せるかもしれませんね。だから世界では、デイセーラーが広がって行く理由のひとつでもある。もはやヨットは別荘である必要は無い。それよりセーリングが面白い方が良い。

家族で気軽にピクニックセーリングを楽しむ。それも性能が良いなら、これがちょっとピクニックも楽しくなるし、家族みんなで走らせる面白さも楽しめる。さらに、シングルハンドもできますから、独りで乗る時はまた真剣にセーリングを考え、繊細にセーリングを感じ、味わう。そして、家族はヨット以外にも味わいたい遊びがいっぱいあるんです。だからデイセーラーはこういうスタイルにピッタリなのです。欧米では既にそういう考え方の変化が起こってきています。

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