第六十二話 ちょいとひと手間


      

最近、セルフタッキングジブを標準としないデイセーラーがポツポツ生まれてきています。便利で簡単なセルフタッキングジブを敢えて標準としないのは何故だろう?シートだって一本で済むのに。しかし、誰かが考えた、もうひと手間かけて遊んでみようと。

メインは元々セルフタッキング、でも、メインにはいろんな操作ができる。トラベラー、バックステー、バング、それに大抵のデイセーラーにはカニンガムがついている。それらを駆使して遊ぶには、ジブをいっそのことセルフタッキングにした方が、特にシングルには楽で良いと考えたかもしれない。

それがこの処、ノンオーバーラップジブ、105%ぐらいのちょっとだけセルフタッキングジブより大きなセールで、短いトラックを設置したデイセーラーが出てきた。聞けば、ノンオーバーラップジブだから、タッキングなんて簡単、シートの左右はタッキングの度に入れ替える必要はあるが、でも、舵操作とのタイミングをピタリと合わせれば、ウィンチなんて回すのは1,2回程度で済む。しかも力も殆ど要らない。そんな事を楽しんでも良いじゃないか。

ひと手間の操作を楽しむという考え方。便利な世の中で、ますます便利になって、そのひと手間をいかに省くかという考え方が多い中、その逆を取って、そのひと手間を遊んじゃおうというのです。それに、セーリングとしてはちょっとの事だけど、セルフタッキングより使える様になる。

あらゆる便利を採用するのでは無く、あらゆる便利を採用しないのでは無く、どこかに自分の感性に合うバランスがある。ひと手間を省くのも、やるのも自由ですが、省き過ぎは面白さが減少する。と言う事で、ちょっとひと手間を遊びんでみるのは良いアイデアだと思います。

シート操作のみでできるセーリングに慣れて、自由自在になったら、トラベラーにひと手間かけて遊んでみる。バックステーやバング、カニンガムなんかは、そうそうしょっちゅう操作するわけじゃ無いから、それぐらいはやった方が面白くなる。

このひと手間という考え方は、きっと先々において大きな違いを生み出すに違いない。ひと手間かけたくなるという気持ちがあるという事、それが面白さに差をつけていくのではないかと思います。

上の写真はイーグル38、ジブトラックからシートはウィンチへ、そのウィンチはヘルムポジションのすぐ横に位置する。舵を握ったまま、楽々とウィンチを回せる。そのウィンチを電動にもできるが、その楽を得ても、ひと手間かけるのを惜しまない。時に、故意に電動では無く、ウィンチハンドルを使う事もある。

来年早々に新造船所から出てくるフライヤー33もセルフタッキングにしていないし、それにドイツのビール8.8もジブトラックが設置してある。セルフタッキングはオプション設定なのです。そう言えば、オランダのエッセンスもそうだ。考え方は少しづつ変化してきています。どうぞ、もうひと手間を楽しんで頂きたいと思います。



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