第七十話 造船所の種類


      


世界には何千だろうか、万だろうか、多くの造船所が存在しています。その多くはプロダクション艇で、その中には大量生産にて建造されるものと、少量生産のものがあります。そのうちに日本に紹介されてきたのは数十社に過ぎません。まだまだ、世界には、いろんなヨットがたくさんあります。

大量生産のヨットは既に皆さんお馴染みのブランドが思い浮かぶと思います。量産艇に関しては、殆ど日本に紹介されてきたと思いますが、世界で圧倒的に多いのは少量生産艇で、年間建造艇数が100艇前後からそれ以下、造船所によっては、年間一桁という処もあります。

例えば、自分で造船所をやるとすると、どういう形態を考えるでしょうか?過去に関わったことのある、或る造船所のオーナーは、ビジネスとして儲かる事を考えるならば、大量に造って、大量に売る事が一番だと言ってました。つまり、どんなに良いヨットを造っても、少量しか造れない場合はたいした儲けにはならないという事です。では、何故、彼らはそれをやるのか?

世の中に良いヨットを送りだしたい。彼らの情熱とかプライドとか、そういうのが原資にあるようです。彼らは、彼らなりのコンセプトを持っています。特に少量になればなる程に、そういう傾向が強くあるのではないかと思います。もちろん、中には自己満足が強すぎる場合もあると思いますが、それだけだと長く続く事はありません。世界の誰かが、それを認めているからこそ長く続けられる。

デイセーラーは少量生産の造船所です。ですから、プロダクション化はされていますが、オーナーの希望に応じる姿勢があります。しかしながら、プロダクション艇である限りは限度があるのは当然です。それがセミカスタムになると、そのリミットは大きく後退し、船内のレイアウトやリグの変更までも対応し、さらに、カスタムになると何でもOK、ゼロから造り上げる事になります。

そういう姿勢を持ちますと、大量になんか造る事は困難です。当然価格も量産に比べて高い。高くならざるを得ないからこそ、それに応じた性能や品質を提供するという事になり、その造船所が長く続くというのは、それらを市場が認めたからこそです。だから高くなるのは仕方無いわけですが、ところが、最近、ちょっと異なる動きも出てきました。

以前、ポーランドやトルコ、クロアチアとか、いわゆる東欧諸国の造船所の台頭という話を書きましたが、彼らの中でも高い造船技術を持つ造船所から、セミカスタムやカスタムのレベルの高いヨットが出てくるようになりました。彼らは長い下請けの経験を持ち、技術は一流、でも人件費は西欧より安い。だから、そのヨットレベルにしてはそう高くは無いというものです。世界は、そういう動きも見せています。当然ながら、比較的大型艇ばかりではありますが、50フィート前後から上、スーパーヨットのサイズなんかもあります。

デザインは有名な西欧のデザイナーを起用し、建造は東欧、これが今後、どんどん顕著になっていくのではないかと思います。また、大型艇に限らず、東欧の造船所は小型艇のプロダクション化した艇も、独自ブランドで既にたくさん造っています。また、ブランドは西欧でも、建造は東欧というのもたくさんあります。今や造船所は東欧に移りつつあります。もちろん、西欧に造船所が無くなるという話ではありません。でも、そういう流れがあると言う事も確かです。

ただ、東欧圏の造船所は、建造力はあっても、販売力がまだ育っていない。ローカルで売るには問題無いのでしょうが、それを世界的に売りに出すという準備はまだまだ足りない。そこが、まだあまり知られていない要因なのかもしれません。知ってる人が少ないのです。彼らのホームページひとつ見ても解ります。勿体ないな〜と思います。

ところで、そういうセミカスタムでの建造プロジェクトを今年進めています。具体的になりましたら、またご報告したいと思います。それまでは秘密ですので、悪しからず。

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