第六十八話 デッキ上の木材


      



とても美しいヨットですね〜! デッキ上は殆どが木材で埋められています。その木材が誠に美しい。木材はみんな好きなんですが、この美しいと感じた直後、メインテナンスが大変そうという思いが浮かんできます。このヨットはもちろんFRP艇ですが、この木材の美しさも売りのひとつなんでしょう。他のモデルも同じ様なデザインです。

木の美しさは、それがメインテナンスをきちんとされているならば、どんなに古くなっても美しいのですが、逆に、まだ船齢が若いにもかかわらず、木がほったらかされると、とてもみじめに見えてきます。このヨットの美しさを維持する為には、この木のメインテナンスがポイントです。ところが、昨今では手間をできるだけかけない傾向にあります。

という事で、昨今ではデッキ上のチークに変わって人工チークを採用し始めています。これはメインテナンスの軽減という事もありますが、チーク材の入手が難しくなってきているというのも理由のひとつです。ただ、このヨットは本物チーク(8mm厚)、マホガニー製トウレールとコクピット周りが標準仕様となっています。今時珍しいですね。さて、このヨットの手間を毛嫌いする前に、ちょっと考えて欲しい事があります。

我々は常に楽を求め、便利を求めてきました。しかし、自分のヨットに手間をかける、メインテナンスをする、掃除する、そういう手間は本当に避けた方が良いのでしょうか?たとえば、このヨットが40フィートとか言うなら、それをひとりでやるのは大変かもしれません。でも、このヨットは26フィート、このぐらいのサイズなら、自分で手間をかけてもそう大変では無いだろうし、その手間をかけて、磨いて、美しくなった時、実に爽やかな気分になれるのではないでしょうか?

ヨットは乗るだけの楽しさでは無く、自分で手をかけてやり、また、手をかけると隅々まで気がついて、自分のヨットに精通するようになり、それでグッドコンディションでセーリングして、また手入れして、また乗ってと繰り返します。この乗るだけでは無く、メインテナンスも繰り返す事で、自分のヨットに対する自分の感覚がより近づき、やがては一体感が生まれていくのではなかろうか?この感覚はオーナーだからと言って誰もが持てる感覚では無いと思います。

メインテナンスと言っても毎日やるわけじゃ無いし、たまにです。メインテナンスを楽しむ日として、チークデッキは洗剤でブラシでこすってやると非常に綺麗になります。26フィートですから、そう広いわけじゃない。但し、トウレールとコクピットコーミングはニス塗装されていますので、まあ、これを自分でやるのは難しいかもしれませんから、業者に頼む事になるかもしれません。それでも、業者の作業だとしても、意識して依頼して綺麗になって返ってくる。この感覚もちょっと違う。これもニスが綺麗なうちに軽くサンディングして2回程度軽くニスを塗れば簡単な作業で終わりますし、船底塗装と一緒にシーズンの始まりに向けてやっても良い。ニスが痛み始めてからやると、古いニスを全部剥がして下地を整えてやらなければなりません。これが本当に大変な作業です。ですから、1年か2年に1回程度です。

これを避ける為にフルカバーなんかしますと、その外しや設置に手間がかかります。この手間は磨く手間とは性質が異なり、あまり身になるとは思えません。それより綺麗に磨くという手間を優先したい。

さて、ここで言いたい事は、綺麗にするという手間は、できれば避けたいという様な事では無く、この程度のサイズのヨットなら、一人でもやれるし、それをヨットライフの一部として積極的に楽しんでこそ、ヨットが本当に自分のものとなり、一体感を感じれるようになって、それこそ自由自在に最高のコンディションでのセーリングを楽しめるようになるという事です。手間をかけてやればやる程、ヨットは本当に自分のものになると思います。それができるのが小型サイズのメリットでもあると思います。使えば傷もつくでしょう、でもそれも自分とヨットの歴史として使い込んだ美しさに育てていく。こういう方法もあるかと思います。美しさはヨットにとって大きなポイントだと思います。

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