第七十話 パフォーマンスを楽しむ


アレリオンというデイセーラーが出てきてはや30年が過ぎました。デイセーラーも案外歴史があるものです。当然ながら、後続のデイセーラーは前例との違いを考えて建造されますし、同時に様々な艤装、素材なんかも開発されて、多くの場合、やはりセーリングパフォーマンスを上げていくデイセーラーが多くなります。

このパフォーマンス、特にセーリングスピードですが、より速くを狙い、よってレースへの参加を視野に入れて、造船所はそういう強調をしますが、ヨーロッパでは実際はレース以外で使う事の方が多いようです。もちろん、レースも楽しむ。でも、それ以外、多くはそれ以外ですが、要は普段はセーリングを楽しむ家族でのデイセーリングをやってます。その時、速いヨットのパフォーマンスを楽しむという具合です。

船体のさらなる軽量化と高い剛性を目指し、セールはだいたいオプションにしてオーナーの意向を反映させる。ダクロンからカーボンまで、オーナーは自分の志向に合わせて選択する事ができる。つまり、レース志向が強いか、そうではないか、レースしなくてもより高いパフォーマンスを狙う方もおられます。

もちろん、後続艇がハイパフォーマンスばかりを狙うわけでは無く、クルージング艇より速い、でも、すっ飛んで走るようなヨットでは無く、誰もが良い気持ちで楽に走れるスピードを目指したヨットもありますが、高速狙いのデイセーラーは多いです。セール面積/排水量比が25以上(30フィート前後のサイズで)という処でしょうか。もちろん、サイズがでかくなりますとこの数値は容易に高くなりますので、ここでは30フィート前後としました。

さて、ハイパフォーマンスになると軽風でも走るようになってきますので、吹かないからエンジンで帰るという事は少なくなるでしょう。そして強風になるとリーフを使えば良い。そうするとセーリングできる風域が広がります。強風で無理してフルセールで走る必要は無く、リーフをどんどん使う。これはセール調整のひとつです。逆に、重めのヨットだと軽風で走らないからセール面積を増やしたいわけで、それでコードゼロを展開するという事になり、このコードゼロはハイパフォーマンスの軽風時にもっと走らせたいという時にも使います。軽風で走るにしても、所詮は軽風ですから。でも、その少しが大きな違いです。

ハイパフォーマンスはレースの為だけに開発されたわけでは無く、セーリングを楽しむ為に建造されたヨットですから、それをレースしようが、デイセーリングしようがどちらでも良いわけで、オーナーが決目れば良い。つまり、ターゲットとする風域が違うという事です。スポーツカーの世界でもいろんなスピードがありますが、それと同じです。

メインとジブとコードゼロ又はジェネカー、これらのセールを使って、風速によってセールを小さくしたり、大きくしたり、それをどうやって操作し易くするかと考えて、小さなジブと大きなメイン、そしてコードゼロやジェネカーをファーリングにしたりして、より楽に、面白くを演出します。それらを自由自在に使いこなせたら、良い気分に違いない。

因みに写真はA27という27フィートのデイセーラーです。排水量は1,700kgです。それでセール面積/排水量比は30オーバーです。パフォーマンスを楽しむのは面白いわけですが、どのレベルのパフォーマンスを楽しむか?デイセーラーというコンセプトは同じでもいろいろあるわけです。

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