第九十八話 スペシャル

   
   

昨年の暮れにフランス人が来て、マリーナを案内したわけですが、このフランス人曰く、スペシャルなボートが殆ど無いな〜と一言漏らしました。いわゆるプロダクションの一般的な沿岸用クルージング艇ばかり、スペシャルというのは、何も高級艇を意味しているわけでは無く、何かに特化した様な個性の強いヨット、例えば、本格外洋艇とか、本格レーサー、リアルクラシック、木造艇、等々、世界は個性の強いヨットを建造する造船所もたくさんあるので、その割に、いわゆる量産艇ヨットが殆どだという意味の様です。そんなもん余計な御世話であります。フランスはヨーロッパの中でもヨットが非常に多い国です。多ければ、いろんなヨットも増えてくる。日本は数が少ないので、個性の強いヨットも少ないのでしょう。まあ、余計な御世話です。

ヨットが文化として広がりをもって定着していくと、いろんなヨットが増えてくると思います。それまでは皆と同じを選び、その後は皆と違うのが良いと変わっていく。スペシャルなヨットは再販する時に需要が少なく、広がっていくとスペシャルなヨットは高価でも需要が増えるのかもしれません。そこまでには至っていないのは確かでしょうね。でも、ポツポツと個性を発揮する方々も出てこられてきました。いろんなヨットがあると楽しいです。

カスタム艇は個性のかたまり、デイセーラーも個性が強い。人生最後のヨットには、再販の事なんか考えずに、自分の個性を最大限に発揮した価値観を前面に押し出すのは気分が良い。何でもできる平均的なヨットは良いけれど、これが得意というヨットは,それを支持するオーナーにとっては最高かもしれません。

セーリングが好きなのか、旅が好きなのか、それらから何を味わいたいのか、どういう操船方法を取るか、見た目のデザインはどんなのが好きか、それまでの経験から自然に湧いてくる欲望を解き放つ。ヨットは人生に無くても良いものだけに、だからこそ何かに制限される必要は無い。但し、予算は付いて回りますが。

要は、人生最後のヨットに、自分のスペシャルを発揮するというのは悪くない。まずは所有しただけで喜びを感じ、乗って喜び、操作して、磨いて、メインテナンスして喜びを感じ、真に気にいったヨットは喜びが溢れて来ます。その気持ちがその人の全体運を向上させると思います。それを自然にやる人が居て、いつも運が良い。物に運があるのでは無く、物に対する気持ちが運を招くと思います。という事で、スペシャルなヨットというのは、気持ちがスペシャルになる。スペシャルな気持ちがスペシャルな運をもたらすと思います。成功と失敗、成功を求める気持ちと失敗を恐れる気持ち、日本人は後者の方が強いのかもしれませんね。知らんけど。

個人的に今最も注目しているのが上の写真のイーグル38デイセーラーです。ジブを電動にして、メインはブームファーリングにして、ウィンチも電動化、メインシートも電動化、全部電動化してひとりでぶらり。コードゼロもファーリングにしたら良い・・・・なんて妄想しています。キャビンは狭いが問題じゃない。デイセーラーですからそれで良い。速いし、美しいし、シングル仕様だし・・・、でもセールはやっぱり白が良い。これが個人的にはスペシャルです。あなたのスペシャルは何でしょう?最後のヨットぐらい、我儘にスペシャルヨットを!とできたら良いですね。

次へ      目次へ