第十七話 時間の過ごし方

日本人は忙しいと書きましたが、実際は国民の休日と称して、かなり休みはあると
思います。ただ、それが飛び飛びなんですね。まとまってどかんとは取れない。ここ
が欧米とは違う。ヨットでロングに出るにはまとまった時間が必要です。全ての祝日
をまとめて取れば、結構な休暇となるのでしょうが、日本はそういう習慣にはありま
せん。ただ、お盆とかお正月には1週間とか10日ぐらいの休みが取れる。それで、
海外旅行などに行ったりするわけですが、昔は、海外旅行などすると、1回の旅行
でできるだけ多くの国を回って来ました。実に休みも忙しいのです。今ではそういう
形態も変わってきたとは思いますが、でも、1箇所に居るにしても、さあ、今日は何
をしようか、どこに行こうかとなるのではないでしょうか。

つまり、休暇となると何かをしなければならないという気分になる。例えば、1週間
何もしなかったら、何か無駄に過ごしたような気分になります。テレビで海外の様子
を見ていますと、芝生の上に寝っころがって日光浴をしている光景があります。何を
しているわけでも無く、おしゃべりとか読書とか、それにご馳走を用意してきている
わけでも無く、簡単なサンドイッチとか。或いは、リゾートホテルのプールサイドで、
読書をしている。ビーチで寝ている。時間的な余裕という事もあるのかもしれません
が、日本人は何かをしたがる人種ではないかと思うのです。何もしないで、ただ、
のんびりできない。疲れたお父さんが、日曜日にごろごろして、ビールのみながら
野球など見ている事はあっても、2日目ぐらいからは起きあがってくる。まして、まと
まった休暇などに、じっとしていられるだろうか。

ヨットに乗る時も同じです。セーリングをしているとは言っても、コクピットに座って、
みんなでおしゃべり、ビール飲んだり、でも、これというのはしている事にそんなに
目新しい事ではなくなってくる。ヨットで移動しているからまだましですが、ゆらゆら
何時間でもとなると、そうしょっちゅうするものでもなくなってくるのではないでしょうか
例えば、アンカーを打って、そこに何時間も停泊して、じっとしていられるでしょうか。
それもしょっちゅうです。こんな事はできません。停泊したら、その周辺でどうやって
遊ぶかを考えます。釣りか、海水浴か、etc.

結局、何かをしたいのに、する事が決まってきて、しかもやることが、ご馳走食べたり
飲んだり、おしゃべりしたりでは、必ずしもヨットである必要性は無いわけで、ただ、
時には環境が変わって良いかなという程度のものになってきます。

こういう日本的な習性から考えて、キャビンを重視するなんて事は、退屈を自分で
演出しているような物ではないかと思うのです。あるアメリカ人が日本人は何でも
計画し過ぎると言っていました。今度の日曜日に、どこそこに行こう、友人を誘い、
何時集合、とか、ご馳走はどうするとか、とにかく、大変です。でも日本人にはそれ
が楽しいのです。アメリカ人も計画はするものの、もっと気楽だそうです。
これが悪いわけでは無いのです。こういう過ごし方が好きなのです。忙しいのが好き
なのです。何かをするのが好きなのです。

昔、2年程、アメリカに居た事がります。その時、思ったのですが。アメリカの若者達
は、何も無いのに延々と仲間で集まって、話したり、何か特別な事をするでも無く、
何も無くても遊べる人種だなと思った事があります。日本なら、何か道具が無いと遊
べないと思いました。

次へ        目次へ