第三十一話 ヨットは難しい

ヨットは簡単です、と言ってきました。誰でも、動けば良いという程度ならすぐにできる。
でも、本当は難しい。誰でもできるものでは無い。だから、誰も乗らない。乗る人、まして
楽しむ人達はほんの一部でしかない。誰でも乗れないから、価値がある。

誰でも簡単にできる物なら、その価値はたいした事は無い。それが世の中。簡単に手に
入る物は価値が下がる。世の中に大量に出まわる物は安くなる。その点、ヨットが大衆化
する事はまず無いでしょう。多くはなるだろうが、大衆化には至らない。だから、それだけ
価値がある。ヨットに乗ると言う事は大変価値のある、希少な経験なのである。

この少ない、非常に価値のあるヨット経験の中でも、シングルハンドというとさらに価値は
高くなる。その証拠に、ヨットが少ないながらも何万という数がある。でも、その内、シング
ルハンドで乗れる人は少ない。それを楽しんでいる人は少ない。だから、これはさらにもっと
価値がある。

資本主義の世の中ですから、希少価値を持つ者はそれを楽しむ事ができます。希少な宝石
世界に一枚しかないオリジナルの絵画、世界に百台しか製造されない高級車。そういう物
を所有する人達は、少なからず、それを楽しむ事ができる。自慢かもしれないし、自己満足
かもしれないが、少なくとも、持たない人では経験できない貴重な経験をする事ができる。
つまり、資本主義の世の中では、大衆ができる事より少数しかできない事の方が価値が
高いとされ、人はそれを賞賛し、羨み、或いは妬む。だから、世界一周する者は賞賛され、
尊敬される。それが世の中。

ヨットに乗っている人達は大変貴重な経験をしています。日本中でも、ほんの一握りの人達
だけが経験できる非常に貴重で、価値の高い経験です。ですから、大衆では味わえない、
貴重な体験をしている。それだけでもありがたい事です。そして、さらに少ないのが、シングル
ハンドの方々です。ヨット経験自体が非常に貴重ですから、シングルともなると、なおさらです。
シングルハンドは誰でもできる。目の前の近場で楽しめると言ってきましたが、実際に実行され
る方は非常に少ない。という事は価値が一層高まる。日本一周しかり、世界一周しかり、誰に
でもできる事では無いのです。

だから、シングルハンドを推奨していますが、シングルハンドがメジャーになる事は無いでしょう。
でもそれで良い。誰にでもできない事だから、それだけ価値のある事をしているのですから。これ
が一般的になってしまったら、価値は落ちてしまう。

希少である程、その価値を経験できるという事はすごい事なのです。ヨットでセーリングする事だ
けでも価値があるのに、さらにシングルハンドなんてものはすごい事です。それを経験している人
はすごい人です。誰でもできるんですが、でもできない。この貴重な体験は人生の大きな財産
です。人ができない事をやっているんですから。例え、目の前の数マイルの範囲であっても、
それをシングルで堪能できる人はほんのわずかなんですから。

いかがでしょうか?この貴重な体験をしてみませんか?と、こう言っても、皆さんに呼びかけても
心配は要りません。シングルハンドは誰にでもできないのですから。本当に心からそう思う人し
かできません。ですから、シングルは永遠に貴重です。

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