第三十七話 艤装
| 艤装は目で見て解るシンプルな装備です。誰でもちょっと考えれば解る。でも、無頓着 な方も多い。ハリヤードがセールのピークからどこを通って、どうリードされているかは 見れば解る。でも、何かが起こった時、どういう構造かを考えて見れば、たいていの事 は解りますが、考え様としない方が多い。細かい艤装について書く事はしませんが、 これまでいろいろ書いて来た事も、全て、自分のヨットに良く乗って、触って、掃除して そういう事の繰り返しでしか知る事はできない。何故なら、頭でわかる事と心で解る事 は次元が全く異なるからです。頭でわかっていても動けない。心で解るには、親しむ 事が必要で、それには充分遊んでやらなければなりません。 良く遊ぶとトラブルに遭遇する事もあります。それらのトラブルは嫌なものですが、考え ようによっては知る為のステップアップのチャンスでもある。そうやって、自分のヨットに 精通してくると全てのヨットがわかってくる。そうすると自分が求めているものも解るし、 スタイルが出来あがる。スタイルが見えると、他人と同じにしようとは思わなくなる。自 分のスタイルに合わせる事ができる。ヨットを楽しむには、遠くに行きたいとか、シングル とか、大きさとか、そういう事ばかり考えますが、メインテナンスを含んだトータルな選択 ができる。 大きなヨットにそれなりの装備をすればシングルで操船できます。しかしながら、自分が 装備される全てを知る事ができるかどうかはまた別の次元です。当社でドイツ製の６０ フィートのヨット、ディスタンシア６０というのを取り扱っておりますが、このヨットはシングル で操船できるヨットとしてのコンセプトを持っています。内容を見れば、驚くような艤装が 数多く施され、確かにすごい。シングルでも動かせます。でも、実際はヨットは操船だけ ではありませんので、このヨットに自分が精通するにはかなりの気持ちのパワーが必要 ですので、実際はサポートが必要かもしれません。つまり、ヨットは操船できれば良いと いうものでは無く、内外装の装備を含めて、支配できる事が気持ちに余裕をもたらし、楽 しむ事ができる。何かが起こってもたいていの対応ができる。つまり、ヨットは操船のみ ならず、ヨット全体の運営ができるかという事になる。それができれば、多いに楽しめる。 だから、本当はヨットを始める時は、小さなシンプルなヨットから始めるのが順当でしょう。 いきなり４０フィートとか始めると、操船はできてもいろんな事を知るには相当な時間も かかるし、一度に多くの事を学ばなければなりません。シンプルな基本的な事がわかれ ば、後はでかいヨットでも基本的には同じ、順を追っていけばでかくなっても、自分のヨット を知る事はそう難しくは無い。 |