第六十一話 セカンドボート

当社でアレリオン28というヨットを取りあつかっていますが、このヨットを金持ちのセカンド
ボートだなと言った人が居ます。気持ちは解らないわけでもありません。サイズの割りに
は高いし、シンプルだし、でかいヨットを持っている人が、別に持つ気軽な遊び船と思う
かもしれません。でも、実際はセカンドボートというよりファーストボートとして、アメリカでは
売れています。

ファーストボートには居住性を良くしてと思う。居住性が良いという事はキャビンが広く、何人
も寝泊りができて、できれば温水や冷蔵庫があり、室内の造りがウッディーで少し凝ってる。
なんてものを求めます。一方、セカンドボートなら、そんな物は不要で、多少キャビンがあり、
シンプルでも美しいヨットが良いと思う。でも、何故、セカンドボートにそういう割りきり方ができ
るのか?考えてみれば、そういう割りきり方が最もセーリングして楽しいのです。ヨットという
性質上、最もセーリングを楽しめるのは、こういうセカンドボートではないかと思うのです。
それでいて、ファーストボートを通常使っているのかというと、使っていない。もし、本当にこの
ふたつのボートを所有できたとして、どちらを使うかというとセカンドボートの方が良く使われる
と思います。何故なら、気軽に乗って面白いからです。外洋に行くなら別ですが、そうでは無い
なら、こういうヨットの方が面白い。ならば、ファーストボートを無くして、こういうヨットをファースト
にもって来てはどうかと思います。

人生においてヨットが全てというなら別です。ヨット以外にも、温泉に行ったり、家族で海外旅行
という事もあるでしょう。映画を見たり、他のスポーツを楽しんだり、スキーに行ったり。他にも
する事はたくさんある。ヨットはその中のひとつです。そのひとつに全てを盛り込もうとすると、
たいそうな物になり、たいそうな物は接し方もたいそうになる。たいそうに接すると日常では無く
なり、構えなければならなくなる。ヨットにファーストボートなんて要らないんです。車を考えて
下さい。セカンドカーなど珍しくもなくなりましたが、ドライブを楽しみに行こうとするなら、ファースト
カーのセダンより、セカンドカーのスポーツカーの方が面白いと思うでしょう。乗って、ドライブして
面白いのはセカンドカーなんです。ファーストカーは実用性です。それで、ヨットのファーストヨット
に実用性があるかと言いますと、無いんです。ならば、セカンドカー的なヨットをファーストに持って
きた方がよっぽど面白く遊べるのです。

何故か、最初の一台目には何でもつけたがる。居住性重視、でも、その居住性は殆ど役に立って
はいない。それどころか、たいそうになり、気持ちがヘビーになり、軽やかさからは程遠い。
それより気軽にセーリングを楽しめた方が楽しいと思います。それにはセカンドカー的思考でファー
ストヨットを考えた方が良いと思います。

次へ      目次へ